元請の憂鬱と大罪

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東京先港、大阪後港の船があったとする。(FO、大阪揚切りでのオフハイヤー船) 荷主は二港にかかわらず同一である。
ところが、東京が満庫の為に、船を東京港外で2日間に渡り沖待ちさせた結果、大阪入港は当初より2日遅れて、日曜の朝になったとしましょう。船会社は日曜揚げ切りを希望。この場合、大阪で日曜に荷役を行うに当たりかかる割増料金は、誰が払うかという問題が起こったなら・・・。

@沖待ちの要因を作った東京の元請に請求。
A入港遅れは当然船会社の責任(東京の元請と船会社が協議するが)、請求は船会社へ。
B(大阪元請は月曜荷役でかまわないのに)あくまでも荷主の要望で日曜荷役をやるのだから、荷主へ請求。
C船が遅れるのは自然の摂理だから、費用は当該(大阪)元請が負担する。
@〜Cまでのどれでしょうか?

即答、荷主に請求できるはずがないじゃないか・・・と考えた方は、かなり港湾に精通していらっしゃるのではないでしょうか。元請は荷主様々である。
元請同士で荷役の委譲に関わって構わないか・・・? さすが港湾運送事業法を勉強していらしゃる。ですが残念ながら、このケースではそれに該当しない。
港湾における荷主至上主義は良くわかる。金の出所である。また、ごまを擦るのも営利目的のために仕方ない。しかし、それがゆえに周りが見えなくなっては、木阿弥。なんの根拠もなしにただそれだけで、荷主に間違ったアドバイスをしては、本末転倒になります。

ちなみに、私の上司であった当時A課長は、「A船が遅れるのは全て船会社の責任となるので、損害を請求せよ」と私に命じました。完全に
A課長ご乱心遊ばされておりました。まぁいつものことですがね(笑) 

この場合にまず元請として頭を過ぎらせなければならないのは、LAY DAY でなければならない。荷主が誤解をしていないか、それなりに探る。

今回の場合は、事情を知った上で荷主と荷役日を打ち合わせる。日曜に荷役を行っても、通関を切り荷主の元へ届くのは月曜の午前となる。月曜荷役となれば、その午後か翌日火曜である。荷主が日曜荷役を希望した場合に上記の割増料金が発生する。本来荷主の都合のみで土曜、日曜など荷役を行うに関して、割増料金は徴収できる。しかし、当然大阪でも荷主にいかなる迷惑もかけないという条件で、東京の沖待ちを許可しているはずであるから、割増料金には関わらない。あくまで、これを荷主に強要しようとすれば、(急がない場合)荷主は月曜の荷役を押してくるはずである。

ここで発生する問題が、
LAY DAY です。傭船契約にこれが設定されていない場合は問題ないが、揚荷日数が規定されている場合、それを超えれば滞船料がかかる。東京にアンカーを打った時をもってN/R TENDER されているのが普通であるから、沖待ちしている間もその揚荷日数時間を使用しているので、月曜揚切りまでそれがもつかどうかも心配だ。また船会社は日曜までの揚げ切りを希望していることから、月曜には新たなチャーターが始まり、積荷の用意もされていることが予測される。

荷主が「荷役は月曜でいいよ」と悠長に言っても、わかって言っている分には構わないが、運送契約をまともに読まずデリバリーだけに集中して、安易な発言をすることも多い。
どういうことかと言えば、日曜荷役の割増料金をケチったがために、デマレージやその他の契約不履行料金を船会社から請求されることになる。(ただし、今回は東京の乙仲が迷惑をかけませんと言った上に成り立っているからには、この請求は東京の元請がかぶることになるだろう。)勿論、そのことを東京の元請も往々にして気が付いていない。また、時と場合に応じては(運送契約次第)デマレージの方が安い場合がある。その時にはてん補する元請は割増荷役料とデマレージを天秤にかけ、荷役日を決定すればよいという考えもできる。

要するに元請が荷主と船会社の間に結ばれた運送契約の中に入り込む場合には、必要な情報を収集し、相当の覚悟をもってそれに取り組まなければならないことになる。船を予定通りに持ってくるのが船会社の仕事だから、「今回の場合、割増料金は船会社に請求する」などの発言は、とんだお門違いで笑い者の極みとなる。

元請が荷主向きに物事を考えることは否めない。しかし、港湾運送事業法や荷主の意向だけで、船会社と渡りあえると思うことは大きな間違いである。
ここでは、これら元請として落とし穴を探って行きたい。

まずは基本の傭船契約からつなげて説明します。

契約名 英名 運航 船員配乗 船舶の
占有権
用船料 経費 備考
定期用船 Time charter
・Priod
期間もの
・Round
往復もの
・Trip
一航海もの
用船者 船主 船主 期間建て
・1ヶ月
・日
船主-船費
・船員費
・修繕費
・船用品
・保険
・船価
用船者-
運航費
・燃料費
・港費
船社間、または船舶所有者と
運航業者間などで結ばれる。
用船者は契約航路内であれば
船舶を自由に配船できる。
裸用船 Bareboat  " 用船者 用船者 用船者 期間建て 全て用船者 船主と用船者の間に資金提供
などの関係がある。外国籍の
便宜地籍船など。
航海用船 Voyage   " 船主 船主 船主 運賃/t 等 船主 船主(運航者)と荷主の間で結ばれる
海上運送契約。船主が占有権者。
 
用船契約は、大別すれば定期用船契約、裸用船契約、航海用船契約の3つに分かれるが、元請として特に重要なのは、運送契約たる航海用船契約で、この場合、用船契約の当事者は運航業者と荷主である。

運送上の船主責任や免責、などは国際条約の Hague Visby Rule を批准し、各国の国際海上物品運送法(COGSA: Carriage of Goods by Sea Act)のもと船荷証券に適用されるが、これは航海用船契約には適用されないことになっている。概略すると、用船者たる単なる荷主は用船契約上で物を言うことができ、船荷証券所持人である荷主は船荷証券発行人責任者に船荷証券上の契約のもとに話ができるということです。

Hague Visby Rule では荷主に不利益な特約は無効とする。ただし、運送人に不利益な特約をすることは妨げない。と規定しているが、この特約規定は先に記したのと同様、(航海)用船契約に適用されないとされている。

日本においては海上運送契約になんらかの特約を規定をプラスして用船契約に準用されることも多く。荷主が船荷証券所持人であって、相手が純粋なる船舶所有者である場合には用船契約上で話をできるが、そうでない場合も多々あるので、荷主は自己の立場が運送契約上にあるか、用船契約上のあるかをよく確かめておかねばならない。
元請はこれら契約条項がどのように結ばれているかをおおまかに把握し、疑問は適宜関係人に問い合わせて払拭しておかなければ、大恥で済まされぬ結果を生む事がある。

用船も船荷証券も同じ運送契約であって、実際はその主要な部分の構成に相違はないと考えられる。それらは、
@船主名
A用船者名
B船名
C積載量
DFrom to
E運賃
F積揚条件
G滞船料
H早出料
I運賃戻し
J港費立替条項
K積揚地代理店指定
L船主免責条項
M用船者責任
Nストライキ条項
O戦争危険約款
P共同海損
Q衝突約款
R離路迂回約款
S契約違反賠償条項
その他
等様々な条項により完成される。この中でも、B/L の表面に書いてあることはよくご存知だと思いますが、さて裏面に小さな文字で書かれている約款を読まれた方はどれくらいおられるでしょうか?
COGSA または Hague Visby Rule にのっとって、こと細かく書かれています。非常に大切なことが書いていますから元請におられる方は一度くらい読んでおきましょう。

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