シーマンシップ
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また、モットー(motto)とは行動や努力の目標とする事柄ですから、日本の商船学校系出身者はシーマンシップと聞けば、10人中9人はこれに似た上記の言葉を口にするのではないでしょうか。 シーマンシップを好んで多用し大目標としているのは、ヨットマンですね。「シーマンシップは精神論ではない、船を安全に航海させる知識・技術」と位置付けているようです。実際、英和辞典を引きましても、 seamanship → 操船術 と、書いてあり間違いありませんが、 ただ、ヨットマンが精神論ではないと断言する根拠が見つかりません。 そもそも ○○○ship とは、名詞・形容詞に添えて次の意味を表す。
シーマンシップを説明する際にスーポーツマン精神(スポーツを通じて養われる総合的人格や技術)と訳されることの多い sportsmanship を例に取り、元々 ○○○ship に精神という意味はないとして、シーマンシップと船乗り魂は違うのだと 逆否定する文献もありますが、私は賛同しかねます。 英語は状況に応じ意訳して構わないからです。 ていうか、素直にSportsmanshipを辞書を調べますと、小学館の英和辞典PROGRESSIVEには、「スポーツマン精神、正々堂々とした態度」とあり、角川さんの国語辞典には、「正々堂々と競技の勝負を争う精神」と書いているのです。この論法のおかしいことがわかる。
外国人の船乗りに seamanship の意味を単に聞くと、ヨットマンと同様「船乗りとしての トータル的な技術・能力」と答えるかも知れませんが、必要に応じた技術を論じる場合、現実的に ○○○ship を 知識や技量と訳すのには、やや問題があるように思います。漠然として意図する意味が伝わりにくい。技量は skill 、技術は technique、知識は knowlege、能力は ability と言うのが一般的ですし、わかりやすい。操船術や航海術を seamanship などと言えば間違いなく誤解が生じます。操船術は maneuvering、航海術は navigating と言わないと通じません。 私はヨットの知識・技術・モラルを総称し yachtsmanship と呼ぶことについて全く否定しませんけれど、ヨットも商船も漁船も軍艦も外国船も同次元で考えて、一括りに 「seamanship はこうだ」等と言うのは、 少々こじつけ気味に聞こえ、無理があるように思います。 船乗り(seaman)に関して言えば、知識・技術のない者はもともとプロになれませんから…。原点が異なります。 冒頭申しました「船乗り気質」は、(昔は)多くの船乗りがもち合わせていた。逆にこれを英語に直すとすればなんと言うのですか? それこそ「SEAMANSHIP」がぴったり嵌ると、私は思います。 (日本)商船での、seamanship なる摩訶不思議な言葉は、結論的に精神論と片付けた方がどうも自然のような気がします。 ちなみに 空の airmanship や 山の mountaineership (alpinistship かな?)などもやはり技術面を総括した言葉なんでしょうか???
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