霧の発生と視界制限状態

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水は飽和状態(蒸発と凝結が釣り合った状態:水蒸気量がいっぱい)に達するまで蒸発(水蒸気:目に見えない)し続け、温度が上がるほど飽和水蒸気量は多い。凝結は通常飽和状態で蒸気が水中に入って起こるのだが、微粒子の核が大気中に存在する場合(海面には塩の微粒子が大量に存在する)、これにくっついて凝結が起こる。これが雲だったり霧だったりする。代表的なものは3つ。

霧は温かい空気が風に流されて冷たいところに移動して冷却やされると出る。(
移流霧) これが霧発生の代表的なもので最も理解しやすい。温かく湿った空気が冷やされ、空気中で水蒸気の凝結が起こるために霧となる。代表的には、北海道の南東域でよく7月頃発生するものが挙げられる。この海域は冷たい親潮の南限で、そこに小笠原高気圧や黒潮の北端から高温多湿の空気が流れ込む。しかし、逆に冷たく乾いた空気が温かく湿った海域を移流することでも水蒸気の発生を促し霧が発生することもある。

雨も霧の発生に大きく寄与する。温かい空気からの雨滴は冷気層で蒸発して飽和させます。温暖前線の前面で多い。これを
前線霧という。


気圧と水蒸気量が一定の場合、温度を下げていくとあるところで飽和状態になる。これを露天温度という。また、秋から冬にかけての季節は昼間温められた地表が、夜冷える外気のために熱を空気中に放射しようとして寒くなる現象があります。この放射冷却によって露天温度に達した地表面付近の空気が露天温度に達すると霧が発生する。これを放射霧というが、海霧はほとんどの場合、移流霧か前線霧である。

瀬戸内海での霧の発生は3〜7月に多い。この間、海水温は季節に追い付かず、気温より遅れて上昇していく。そのため瀬戸内海では気温より2〜4℃ほど低い海水があって冷気層がその上を滞留している。そこへ湿った空気の南風が四国山脈を越えて供給されることなって移流霧ができる。

瀬戸内海の霧の特徴は、
1)低層(海面から50〜60m)の霧が多い。小型船や漁船などは見えないが、”大型船のマストは見える”などの現象がある。
2)前日に雨が降っているとさらに海水が冷却されて霧の発生につながる。
3)移流霧に限ったことではないが地表面・海面が温められると霧は消滅する。瀬戸内海の霧も日の出3〜4時間前から発生し、正午前に解消することが多い。

視界制限状態(狭視界)は、視程何マイル以下か?
海上衝突予防法3条12により、「視界制限状態」とは、霧、もや、降雪、暴風雨、砂あらしその他これらに類する事由により視界が制限されている状態をいう。」と定義されているが、具体的に視程何マイル以下が視界制限状態であると規定されていない。

その海域における船舶の輻輳状態、その船舶の状態や性能、狭水道航行時、沿岸航海時、気象(荒天時)などによってその危険度が異なるからです。
しかしながら、目安というのはある。
例えば、社内安全管理規定で「視程2mile未満で船長に報告」などとあったり、保安庁は来島海峡や備讃瀬戸等海上公安全法適用海域で、200m以上巨大船で2000m以下、160m以上の船舶で1000m以下を基準として視界制限時の待機を指示できる。また、関門海峡や特定港等では、「視程が500m以内での入航を禁止する」などと規定される。
これらから視界制限状態あるいは、狭視界というものがどういったものかということと、自船の置かれる状態を鑑みその危険性を漠然と推測することができる。

それらの場合には、下記に注意する。(国家試験頻出問題)
@船長への報告(船長による操船・避泊の検討)
A見張りの増員
Bレーダーの適切な操作
C安全な最低限度の速力に変更(機関の準備・制動の容易)
D霧中信号の実施(海上衝突予防法35条2二分を超えない間隔で長音を一回鳴らすことにより汽笛信号を行う)
E海上衝突予防法19条の5
1他の船舶が自船の正横より前方にある場合において、針路を左に転じること。
2自船の正横又は正横より後方にある他の船舶の方向に針路を転じること。
の遵守

港内では特別法である(追い越し等)港則法が海上衝突予防法に優先されるように、
視界制限状態においては海上交通安全法の規定よりも海上衝突予防法19条に優位性があることも忘れてはならない。


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