港湾タリフとギャング手配

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港湾荷役料金に内航・外航の別はなく、また各港、各社が自由に決めているのでもない。昔から全国的なタリフがあって、現在は平成7年認可タリフを使用している。ただ、平成12年からは規制緩和の一環か届け出制となって、タリフと異なる料金も認められることとなった。

とはいえ、過度のダンピングは港湾事業の安定を損なう恐れがあるため厳しく取り締まりされることから、やはりタリフを大原則に各港の料金があるとも言える。(国土交通大臣は過度のダンピングに対し、監査を行ったり、料金変更を命じることができる。)

ここでは、Berth Termに関する元請け料金(船内料金のみ)を抜粋し解説する。(FIOの場合はこの料金に沿岸料金も含めた額が提示されている)

料金の計算トン数は重量、容積のいずれか大なる方とし、重量は1000kg、容積は1.133M3を1tとみなす。コンテナは実入り、空とも32t/20ft型、48t/40ft型とする。
(ガントリーを使用しないLOLOのコンテナでは特別料金としてかなり安くしているところもあります。)

下請けの弱み
本来これらは、純粋に船内荷役業者に入る金であるべきだが、船社と元請け、あるいは、荷主と元請け(沿岸作業を含めたものになるが)の料金の基本となっていることが多い。

要するに元請けがいくらかのマージンをとるから、実際の船内荷役作業会社の実入りはこれより低い金額ということになる。FIOでは、船内荷役料+沿岸荷役料+通関料+搬出(出庫)料などの一環料金でトンいくらとか、カートンいくらとか荷主と契約していて、作業会社(二種業者)も一連の業務を現場ごと請求するので、一種業者が得るマージンも薄くなるが、Berth Termでは船社から船内荷役業務のみを受けているのでなかなかきつい。

運航を行う船社、貨物を輸出するメーカー(荷主)、元請けは一部上場の大会社であるが、船内作業会社は所謂中小企業であるから、力の関係がものをいうのだろう。日本企業の縮図がここにもある。


作業範囲:
揚荷の場合は、本船の貨物を艀内または岸壁上に取卸し、フックをはずすまでの作業。
積荷の場合は、艀内または岸壁上の貨物にフックをかけ、本船に積込むまでの作業。

割増料金:
前夜荷役(16:30〜21:30)基本料金の60%増。
後夜荷役(21:30〜05:00)基本料金の100%増。
土曜荷役 基本料金の60%増。但し、祝日がある週は0%増
日祝荷役 基本料金の100%増。

割引料金:
1000〜3000tの大口貨物は、基本料金の5%
3000t以上の大口貨物は、基本料金の7%

待機料金:
船の入港遅れ、雨待ち、荷役装置トラブル等、作業が滞った場合に、請求されます。ギャングの人数により規定されています。(鋼材などは1gang7~8名ですが、バナナ等青果物などで1gang20名以上などというのもあります。)


最低料金:(ミニマムと言われることが多い)
船の入港遅れなど、手配申し受け最終時刻(昼間は前日15時まで。前夜は当日15時まで)以降2時間を経過してからの取り消しについては全額、荷役開始後になんらかの理由で中断したのち、例えば、天候の回復が期待できない、本船の荷役装置等のトラブルが修理不可となったなどの理由で、当日の荷役を継続できない場合のおいても最低荷役料金が請求されます。ただし、そのときまでの荷役量がそれを上回っていた場合には適用されない。



@ギャング手配とギャングの円滑な回し方
バルクや鋼材などの船内荷役は、1船に対し1gangか 多くても2gangで、元請け1社がその専属船内業者を手配する。しかもクレーンの能力は15〜20回/hと遅いからgang回しはいたって簡単です。せいぜいチヤブ交(昼飯時の交代:港によって料金の対象となる場合がある)があるぐらいだが、青果などの荷役は1gangの人数が多く、4gang(船内作業員の総勢は100名を超える)などとなることも頻繁で、とても専属1社では賄いきれない。

1船に荷役業者が4社も乗り合わせることになると、1番や落とし口などやりにくい箇所ばかりに特定の業者が当たったり、取り分が極端に少なくなったりしないよううまく数量を配分しなければ揉める原因となる。各ハッチの先港取り分は異なる(例えば、片や50,000CTに対し片や10,000CTしかないという具合)し、クレーン(デリック)の能力は60回/hour程度で、能率が悪い(全ての業者の荷役能力が同等ではない)とすぐに荷役時間延長につながる。当然青果物は1日での取り切りだから、ロスをしないように時々刻々ギャング回しを変える必要がある。上手く捌くのは簡単でない。

(下図は青果物3gangのまわり例)


Aフォアマンの考えることは多い。
夜荷役をやって深夜に出帆させると、深夜荷役の割り増し料金がつくし、出帆に際しても綱取り、タグ、パイロット等割り増しが付く。翌日ギャングミニマムにならない程度の量を残して、昼過ぎの出帆とした方が船社のコストセーブにならないか? 次港が日曜に重なって荷役がないならいなら、コストをかけ、夜荷役でやり仕舞いするメリットはない。いやしかし、翌日昼には通関を切って貨物を出庫させるのが荷主の絶対条件である。などなど、バースターム / FIOで、それぞれに考慮すべきことが異なり、頭を悩ます。


B荷役が5分止まると500分の損失
バナナの荷役では上述したように船内荷役の作業員が各二十数名乗り込んでくる。それが、4gangと、それに沿岸作業員、検数等々100名からが携わっている。5分荷役が止まっても一人ならば大したことないように思うが、ちょっと気の利いた仲間の親分やフォアマンは、「 5分 x 100名 = 500分/人 」 の損失と考える。

一人であっても、500分あれば、バナナのカートンをパレットに何個配することができましょうか? だからクレーントラブルだの、雨待ちだの、入港待ちだの、作業が滞るとイライラ感が募ってくるという具合で、
「おい、いつまで遊ばせるんか?」
と、なる。
船社や荷主にこういった発想はまずない。「待ち1時間につき3万円とか5万円」とか「タリフ通り払えばそれでいいのだろ」という浅はかな考えは禁物だ。そういった簡単なことではないからです。

港では、遣り仕舞いという非常に効率的な考え方がある。荷役(仕事)が終わったら定時前にでも退社できというシステムだ。だから、皆、荷役開始何分も前に現場に来て段取りし、0830前に巻いて、30分JUSTに一つ目の貨物を岸壁に降ろす。以降Gangどうし競争して早く仕事を終わらせて帰るのだ。そこには工夫があり、経験があり、努力が必要である。早く終わる。仕事ができる。社の評判が上がる。要するにそこにプライドが存在するのだなあ。

作者著書