荒天時における進路の選定(小型船舶操縦士必見!)
新聞、テレビなどで海上の事故を見るたびに心を痛める。そこに防ぎえたかもしれない事故が多く存在するからです。ここでは荒天時風浪を受けての進路選定について述べたい。
小型船舶の方に参考として頂ければ嬉しいです。
まず荒天に対しては、それを予想し逃げることを考える。小型船舶などでは「出ない!」これが最も堅実な選択である。これに勝るものはない。
「せっかくの日曜日、友人を集めたのだから海に出ないと今後の信頼にも関わる」
これで何人もの人命が失われてきた。腕を過信してはいけない。海を舐めてはいけない。漁師が出れない海に喜んで出て行く挑戦者がいる。あなた方は冒険者ではありません! それに・・・せっかくの日曜日ではない、せっかくの命である。大切にしましょう。
しかし、用心していても予想に反し時化てしまうこともある。以下の知識がお役にたつかも知れません。
では、はじめます。
まずは、波の方向が船に与える影響です。
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左図は、任意の方向から波を受けて航行する場合の安定性(保針、操船、揺れなど総合的に)を示すものであって、荒天(大波)に対する推薦退避順位ではない。以下を説明する上でわかりやすくするために添付したものである。ご理解願いたい。
荒天に際しては、まず・・・・の大前提はありますけれど、・・・・・をどの方向に受けて安全地域まで航行するかは、「必ずこれ!」といったものがない。荒天の度合いやその性質(台風など)、自船の・・・・、・・・・、・・・・・、復原能力、勿論・・・・が急転することもある。その状況に応じて安全な進路を決定しなければならない。
したがってそのためにも、これらの知識を十分に備えておくことが不可欠である。
向い波は縦動揺が大きくなり、スラミング、プロペラレーシングなどの現象を受けやすい。また、大波に突っ込み極端なトリムとなって・・・・・を失うこともある。縦動揺を減じるには風浪を船首側・・・・・点に受け、できる限り(・・・・可能な最低の速度・・・・・kn’t)・・・・を減じる。これをheave
toという
*1点(point)= 360°/ 32 = 11.25°
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・・・・・・・・・・は波の衝撃がもっとも少ない。荒天から積極的に逃げる方法でもある。ある程度の大きさの波までは安定し航行できる。
但し、・・・・・・から受ける、または・・・・・・・・・を受ける場合はブローチングに注意する。保針性が悪くなる、・・・・・、・・・・・・・・・・がある、などの兆候を察知したならば、直ちに進路を変更し・・・・・をさける。
・・・・・は論外だからだから説明は省きたいが・・・。波の周期と船の・・・・・・周期とが一致すれば、大動揺となり切迫した危険に陥る。こんなことは誰でも知ってますよね。
ブローチング現象
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この現象がどのようなものか、概略そのメカニズムを左アニメーションで示した。
画面右したから動く青線は波頂で、その間に波底があるものと考えていただきたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・が来襲し転覆に至る様を大げさにシュミレートしてみました。
・・・・・・・・・・・・・でヨーイングをしているが、・・・回目の・・・・で保針困難となり立て直せない。
そこへ、・・回目の大波が打ち寄せ船体は大傾斜を起こして波間に横たわる。 |
荒天時転覆事故のテレビ解説では、単純に「三角波(多方向から来る波が重なり合ってできる高い波)により船が持ち上げられて転覆した。」とされることがよくあるが、私は・・・・・・・・・・・・・・転覆事故が一番多いと考えている。
追い波順走中に高速(特に・・・kn’t以上、小型ボートなどでは・・・kn’t以下でも注意)航行する場合、船は波に押され波に同調するかの速度まで加速されることがある。いわゆる波乗り状態であるが、この状態に陥った船は、船尾が波の谷間(低部)から頂部に至るタイミングで、(1)急激なヨーイング運動が誘発されると共に(2)・・・・・・喪失状態が持続する。この結果船は波の・・・・・・・・・・しつつ大傾斜する。つまり波間に・・・・・・・とする。ここに横波がデッキに打ち上げる、積み荷が崩れる、・・・・・影響、・・・・などの他の・・・・・・・・・・が重なると船はさらに傾き、ついには耐航性が損なわれる。・・・・・・・・・・の限界を超え転覆するということになるのです。小型・高速船で起こりやすい。
ブローチング現象に対する注意点として次のことが挙げられる。
・・・・ が小さいときは要注意。
・船尾足がよい。
・保針可能な限り・・・・・・・・・・・・・。・・kn'tより下げる。
・・・・・・・・・・・が遅いので、特にプレジャーボートで注意。・・・kn't以下でも危険。
・出会い角が・・・・・°で特に危険。(かといって・・・・・で波を受けてはならない)
・操舵は小刻みに。
・大波は避ける。・・・・・・現象で舵が効かずコテンといく。
・波の出会い周期が船舶の・・・・・・・・・・・・程度で大揺れが起こりやすい。
次は復原力の低下です。小型船舶はパタンとこけるような感覚になる。
小型船舶操縦士の方は意外と知らないがこれも非常に怖い。
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波による復原力減少のメカニズム
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船の浮力は水没部の排水量(Dispacement)であり、傾斜角ををθとしたときの(初期)復原力Stabilityとの関係は以下の算式で表される。
Stability = Displacement x GZ = Δx GM x sinθ
したがって、波によって持ち上げられた船(点線が元の水線)は、排水量が減り・・・・・・・・を失う。この結果・・・・・・は下がり、・・・もまた小さくなる。算式にあてはめて一目瞭然である。復原力は弱まり、大傾斜を生むことがわかる。
皆様がレジャーを楽しんでいた最中、注意していたにもかかわらず前線の通過などで、荒天に遭遇したとしましょう。しかし、泡食ってはいけない。
慌てて港へ帰りたい気持ちはわかるが、それが非常に危険な場合がある。
波の状態次第では・・・・・・・・の方向に向けて暫くこらえることも必要です。その後、冷静に波の動向を見極め、改めて進路を選定しなければなりません。安全に航行できる進路を確保できるなら、それが遠回りになっても構わない。急がば回れと言います。どうかご安航をお願い致します。
参考:
1. ヨーイング
波には回転運動が起こっていて、波頂部ではその・・・方向に、波底部ではそれとは・・・方向に水が移動している。この力は瞬間的に船を・・・・・・・・・・・・となり、船が針路から逸れる現象を起こす。これをヨーイングという。
1) ・・・貨のとき
2) 波長が船の長さと・・・程度
で影響を受けやすい。
2. 波の性質
・波の速度m/s =(重力加速度9.8m/s2 x 波長 ÷ 2π)0.5 または 1.25x √波長m
・波長は波高の30〜60倍と考えられている。
・波のエネルギーは波高の・・・乗に比例
3.一般的に船は風上に切りあがる性質を持つ。
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