Port Captain

ポートキャプテンの仕事

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1.ポートキャプテン と フォアマン
バースターム船のシングルデッカーにサブでアテンドするために地方へ行ったときのことである。その裏使命を端的に言えば、上司から「雇いのポートキャプテンのギャング手配に問題があるようなので調べて来てくれ」とのことだったのだが、問題はそれ一つではなかった。まず、老舗元請け業者のForemanの発言にたまげた。
「ギャングを増やせ増やせと、言いますが、それは優位的立場からの強要。独占禁止法違反ですよ。」
と、きた。2gangを3ganagにしましょうと言っているわけではない。1gangを2ganagにしてくれと頼んでいる。
どこかのしょうもないホームページでも見て知恵を付けられ言っているのだろう。しかし、これがあのS倉庫のフォアマンの言うことか?さらに彼はこう続けた。
「もし、2ギャング入れるなら、1gangはポートキャプテンに見てもらわにゃやってられませんわ。」
ヘルメットの顎ヒモも締めず、ポケットハンドにタバコを吹かしながらで、だらしない。ここまでくれば、資質も疑わしい。元請けフォアマンの仕事というのを全くわかっていません。それは、暗に「僕には2gangを見る力量がありません。」と、言ってるに他ならないのだが、その場合でも、元請け責任としてフォアマンを追加するのが筋であるから、自分が恥をかくだけです。常識あれば上記のようなことを普通は言えない。仮に荷役が複雑で、どうしても2人のフォアマンが必要な場合は、ポートキャプテンと正規の交渉をしてExtra料金をつける。足元を見られるような真似は賢明ではない。しかし、今回の場合、明らかに1人のフォアマンで賄える仕事であったことを付け加える。
金銭授受の関係はあっても、仕事上、ポートキャプテンとフォアマンはあくまで対等である。しかし役割を混同されては困る。
ここでは、ポートキャプテンとフォアマンの違いや関係性を実際の仕事を踏まえて説明します。

フォアマンは、元請け業者の海務係がなる。船内/沿岸業者を手配したり、乙仲と搬入時を打ち合わせたり、代理店への連絡も行う。いわば荷役のキーマンで現場の指揮・監督にあたる。どちらかというと、フォアマンの方が頭を使う。
一方、ポートキャプテンという仕事は、荷役上において航海士や船長の代わりをする。様々な船種によってその内容は少々異なる。ここでは、在来船のポートキャプテンとして語る。
ポートキャプテンは、船の容積、D/W、船体強度、スタビリティー、トリム等を考慮しつつ、貨物の最大積載量や、積み付け位置、保定方法などを決定する。所謂プランナーである。そしてそのStowageをフォアマンに渡すのである。現場では、その計画どおり安全に事が運んでいるか、確認をする。事故が起こった際にフォアマンに現認書を作成してもらったり、場合によっては船社から元請けさんにその求償をしたりするので勘違いしている者もいるが、現場でフォアマンがポートキャプテンの言う事に応じてくれ、また相談しつつやってくれるのは、単に責任回避のためである。本来、ポートキャプテンに彼らへの指揮・命令・監督権はない。
(港湾運送事業法の免許がない) したがって、アテンド(立ち合い)しているという表現がぴったりくる。
だから、貨物によっては現場へ行かないことも多い。というか、フォアマンとの信頼関係もあるし、立場を尊重することも重要なので、任せるところは任せ、何でもかんでも現場に行って邪魔しないということだ。重量物の本船荷役(この場合は船長にかわって指揮権を得ることもある)があったり、危険な切り積みがあってLashingが気にかかるなど特殊な場合にのみアテンドするという具合です。
しかし、それでも現場への要望や意見、質問は、やっぱり全てフォアマンを通して行うことになる。(それが必ずしもやってもらえるとも限らない。船内業者の経験と英知で解決されることも多い。結果OKであれば良いのであるから。)


I-beam 積み付け@ I-beam等積み付けA

フォアマンは、乙仲からもらうBookingと、ポートキャプテンから来るStowage Planによって、より詳しいLocal(Stowage) Planを作成し、関係各所に指示するのである。
この際、ポートキャプテンは余分な係船料や夜荷役、夜出帆等割増その他(傭船料はこのタイプで$15000/dayくらい)がかからぬようできる限りたくさんのギャングが入るようハッチを割って積み付けを考えます。そうなっていれば、Formanは、艀が2隻並ばぬとか、雨のバレが怖いとか、物理的要因がない限り、当然それに見合ったギャングを揃え、船会社の要望(早出し)に応えなければならない。利害が生じるからある。これは義務に近い、契約上の暗黙の了解、もしくは港の常識と言える。そこに優位的立場の強要など存在しない。
船社と元請などは長い付き合いですから、港が繁忙期や特別な事情で10回に1回くらいはギャングが揃わないなどのことがあります。そんなことはお互いわかりあったことですので、問題にしない。しかし、これを故意に怠ったり上記冒頭のようなことをやれば、勿論クレームや、損害請求の対象である。

ただ、このフォアマンを擁護するわけではないが、ポートキャプテンが輪をかけて悪いことがある。遅延行為をポートキャプテン自らがやっている場合だ。
ポートキャプテンを相当偉い存在だと誤解しているやつに多く。そのくせ、仕事はフォアマンの延長のように考えていると、こういったことが起こる。役割を把握していないからである。
ポートキャプテンが、元請けフォアマンからBookingを取り寄せ、自分でローカルプランを描いているなど、たまげた人がいる。あげくには、フォアマンをホールドの中に入れ、自分はハッチにしがみついて携帯でありとあらゆる指示を出す。フォアマンを召使い扱いして、越権行為甚だしい。大問題である。
ポートキャプテンにそのような権限は絶対にない。前述したように、ポートキャプテンは、Stowage Plan通り貨物が入っているか、保定がなされているか?なされていなければ、何故か、それに代わる手法、対策が施されているか、それが妥当か?それらをチェックする。(本船荷役時は別) その程度のものだ。(どうしても納得できないものは、勿論やりかえててもらわねばならないが) よくフォアマンが我慢してくれていたものだと思う。お互いの役割を尊重し合い、信じ、全うしてこそ、仕事はうまくいく。

先港で積んだ貨物の上に、次港で追積みするということをよくやる。例えば、I-beamの上にWire Rodを積むなどです。貨物を綺麗に並べると、次の港で追い積みしやすいのだが、過ぎたるは猶及ばざるが如しというやつで、後に述べるが無駄に時間を費やすのだ。仕事にはそれにかかる適切な時間というのがある。それ以上時間をかけるならそれは自ずの趣味の世界だ。他人を巻き込むな。この方のは正にそういうのなんですね。
次に示すのは、最低中の最低の荷役と思って間違いない。BookingにあるI-Beamの高さを1本1本調べ、端から高さを揃えて置いていくなどの計画をポートキャプテンがした。ここまではまだいいのだが、1本違わず自分が計画した順番にI-beamを置いて行けという。1段目だけでなない。2段目。3段目も同様である。
ところが、浜の艀おとしは、そんな順番で艀に入れてきていないから、艀から本船積みの際に荷繰りが生じる。どういうことか、一番最初に本船積みしたかった品物が、艀の底に入っているということが起こるのです。
これを適えるためには、すべての品物を一端仮陸揚げし(通関を切った貨物を仮陸揚げするには、本来手続きが必要)、それから陸で選別させて、自分のプラン通り積んでいくのである。この狙いは、単にダンネージの節約なのだが、そのために揚げ積み、選別で3-4時間を無駄に費やす。そのため出帆が伸びるなどになれば、なにしよるかわからん。ダンネージ5万円削減するのに、みんなえらい目して結果的に20万円損するといった具合です。骨折り損のくたびれ儲け。積まないと現場の士気も下がる。(見ていると、最終段階で高さを合わさねばならず、そこでダンネージを大量投入するから、言うほどほとんどダンネージの削減になっていないのが実情だった)
先積みが下層に! 全てonce landしたさま

まず、浜の艀おとしのやり方をポートキャプテンがフォアマンにクレームをつけるなど筋違い。いいですか?バースタームなんです。100歩譲っても船社の営業からやんわり荷主さんにお願いするのが関の山で、それでも99.99%変わることない。船社の希望が通るのは鉾下からなんです。わかっちゃいない。 もっとも重要なことは、クレーンを止めてはならないことだ。これは荷役の大原則である。気の利いたデッキマンになると、フォークの荷繰りでクレーンを止めているだけで、ドヤシ上げるし、資材をホールドに入れるにも艀の付け替え時を狙ったり気を遣う。兎に角、荷役は持ってきた来た順番に積んでロス時間を作らないことが大切だ。高さ調節などは、ベテラン船内ボースンの手腕に任せる。ヘタクソがやればダンネージはたくさんいるが、それでも増減はたかがしれている「今度は頼むぜ」ぐらいのもんで、そこにポートキャプテンが首を突っ込んでかき回すなど言語道断で、決してやってはしてはならない。荷役のなんたるかを全く分かっていない。

積まにゃ、船は出帆できんのでぇ!
 
ましてやシングルデッカーで高さの制限はない。フォアマンがもし、こんなことをやっているなら「さっさと積んでくれ!」と、いうのが本筋で、ポートキャプテン自らが遅延を指示するなどヘボと言って差し支えないだろう。ポートキャプテンの仕事を勘違いしている。
不肖、私などがアテンドに行くと、フォアマンに「これ、なんで止まってるの?」、「何のための荷繰り?」などしょっちゅうフォアマンに説明を求める。「じゃあタイムシートに入れますよ。」などとしておく。後に起こる、半夜30分はサービスで。とか、クレーントラブルの時間をチャラにしたりする交渉に使う。

この荷役は、私の見立てで、2gang のDAY3日で終わる仕事だったが、案の定、1gangで 5日+ 3harf nightかけて、ダンネージが少なかった。美しくフラットに作れたと、威張っている。係船料+半夜料、その他、総航海日数の延び、なんぼ無駄銭払っとんねん? 
元請け、船内、沿岸荷役業者にしても非効率は、不採算行為だ。バースタームの場合、日本ではそのトン数、容積でお金を払う。5日もかけても、3日で終わっても船社から払われる金額は同じなのです。みんなで損してポートキャプテンの趣味につきあってやってる。と、こういう話だ。ポートキャプテンとしては2流である。在来&重量物ではとてもじゃないが使えない。
このポートキャプテンは今回で担当が、丁度100隻目だと自慢していた。「たった」と思ったがそこは黙っていた。1隻の遅延で傭船料を入れると、だいたい300-400万円くらい損失(仮にダンネージを20万円ほど削減できてたとしても)となっているから、ざっと勘定して、100隻(10年だそうだ)でTOTAL 3億から4億の金が水に流れたことになる。誰かいい加減気付けよな、とういう話だがそれだけわかる人がいなかったということだろう。


どうせ積切りの前段階で大量にダンネージを投入するので、TOTAL的には思ったほど節約されていない。

ローカルプランを自分で描く時点で、ポートキャプテンとして失格です。というか、Bookingだけもらっても、付随する情報が必要で、本当は描けないはずなんです。フォアマンは乙仲、船内、沿岸、艀業者などと連絡をとり、トータルコーディネートする。そこへ一部だけを描く、または訂正しようとすると大局を見誤る、。結果として、時間がかかる、手間がかかる、2gang立てれなくなる。など弊害が次々に起こってくる。フォアマンは子分か召使扱いされて、これこそ、優位的立場からの強要なのだがそれは言わないのだなあ。

フォークで追い積みする場合(下段Steel Plate) レッカーで追い積する。(下段はI-beam)

フォークで追い積みする場合は、下段積貨物の上を縦横無尽にフォークリフトが走り回れるよう、下積み貨物の上面をできる限りフラットに作ってやる必要がある。しかし、レッカーでやる場合は、動き回らない。したがって、上積みされる貨物に不都合がない程度に上面を仕上げればそれでいい。いうなれば、フォークでやらないなら、時間かけてこんなに綺麗にする必要はない。無駄に時間と金をかけるなということだ。
25tレッカーで、港の付き合いならオペ込み 8-15万円/台くらいで手配できるから、私なら出帆を延ばすより、次港でレッカーを段取りする。ならば先港ではそれなりの積み付けとして労力軽減を目指せる。どうせ4段目や5段目はフォークでできない。
疑問を呈されて当然だ。ということを理解していただけたと思う。




2.ポートキャプテンの本船アテンド心得
私がこの業界に足を踏み入れ、ポーチキャプテンとして現場へ立ち始めた頃、仕事を終えてレポートを上司に提出した際、「フォアマンに頼んだ」や「やってもらった。」などの文言を、「フォアマンに指示した。」、あるいは「させた。」に訂正させられた。ものすごい違和感を感じた。この会社に、すべてを通じてこういった驕りが支配していることを知るのは、それからそう遠いことではなかったが。。。

荷役の総監督はForemanである。
ポートキャプテンは単なる本船側のアドバイザーとしての立場を重んじる。礼を以て各所対等に話すこと。金の出所が船社のため、例の如く現場で自身が一番偉いと思ってるポートキャプテンがいる。相当の世間知らずか、バカである。お互いの立場を尊重し合い、その役割を担わなければいい仕事とならない。「やらせた」では決してない。
荷主さんは船会社に運賃を払っている。だからといって、どこの航路を通れ、何番ハッチにどう積めというか? 餅は餅屋!です。対抗してはならない。但し、ポートキャプテンはフォアマンに要望と責任追及はできる。そこのところを忘れなければよい。そうすれば、「お願いした。」で、なんの不都合もない当然の言葉づかいである。
(外地で、ポートキャプテンがフォアマンの役目までしなければならない一部地域があることも確かだが、内地サイドではそういったことはまずない。)

Foremanに対して

1)Localプランのチェック。自分のプランに沿っているか? 特殊積付け等指示したか?疑問点は荷役前に解消のこと。
2)Lashing本数、Dunnage本数、方法等について打ち合わせ。
3)自分の考えるGang回りとForemanの考えるGang回しは同じか?なぜ違うか?遅延につながらないか?
4)本船←→上屋の横持ちトラックは何台?(外地) 艀繰りはよいか?待ちは発生しないか?
5)Crane能力をFull活用しているか? Forkの荷繰りでCraneを待たせていないか?(荷役業者怠慢)
6)Foremanの適正(下請けの親方に押し切られず仕切っているか?船社のProfitを優先しているか?)
7)小物の形状、吊り位置、数量、荷揃いをチェック(外地)
8)中甲板のFork LiftはAXILE LOAD以内(弊社船5t)まで(場合に寄り都度7tを許可)
9)絶えず終了時間に気を配る。時間短縮できる方法はないか? また半夜料金は把握しているか?
10)事故は勿論、遅延、変更、異常がForemanから都度連絡されているか?
11)揚げ地のことを考えた積み付けになっているか?(揚地で5tフォークしかないのに、奥に7tの貨物を入れていないか? 落としの箱にプレスリングは付けたか?等)


Lashing & Securing
1)鋼材にコードストラップは、不可
2)チェーンとワイヤーのCombineは不可(効き始めるタイミングが異なる)。チェーンならチェーンで揃える。
3)単体Lashingで4本は不可。(1本切れるとお陀仏) 計算上満たしていても増量
4)メタルタッチはないか?(ウエス、バーラップ)
5)雑Shackle、雑Turnbuckleを使用していないか?BL20tを使用
6)15t以上のCaseはStopperを推奨する。底と貨物とのgapはSling径の3倍以上あるのが理想、なければDunnageで底上げ。
7)隣との隙間に注意し、Leading Ropeは必要ないか?
8)Pipeは上2-3段目落としになっているか?
9)キーコイルの、Gapは適切か?
10)その貨物は、side to sideで留めるのか、単独で留めるのか?

Chocking注意
1)3寸木材の座屈荷重は50cm間で4t。これが2mを超えると1t程度になる。筋交い(ブレース)を活用。
2)動揺によりChockingが脱落する可能性はないか?
3)PipeやCoilには必要に応じWedgeが入れられているか?

切り積み
1)サイド引き付けRound Lashingで10tと考える。100t貨物中甲板積み→100t x 0.6(加速度)-摩擦 = 50t よって5本以上
2)30-40%はジャンピング防止で下向きに。60-70%は壁向きに。
3)Dunnageの本数はよいか? Transの上にdunnageが乗っているか?(メタルタッチ/ 荷重分散)
4)計画より積み付け面積が縮んでいないか?(ユニフォームロード注意)

溶接
1)Stopperは基本的に全周溶接。効く方向は出来るだけ長く。(TSTはグラインダー出来るので短くしたがる.注意)
2)ポンツンの隙間から火花(spark)が下に落ちていないか。Fire Proof Clothの使用
3)Stopper や D-ring 等の溶接は、必ずTransbeam等の強度部材上に設置すること。
4)溶接自体の出来・程度は?
5)使用Stopperは指示したものになっているか?H-beamの方向はよいか?
6)本船のみの溶接員で足りるか? 陸上手配は不要か?

重量物積載 :鉾から貨物下までの吊り方等写真はMUST
1)Lifting資材は早めに段取り(前日就業後や昼休みに用意させる)させ、間違いないかチェック
2)貨物情報と実物に違いはないかチェック(Lifting Point, Projection, Skid位置)
3)事前打ち合わせ(本船技量に合わせて綿密に!)また、Steveにも内容・やり方を示してやること。
4)指示通りのバラストコンディションとなっているか?(重量物吊り上げ時GMを保てるか?)
5)時々刻々コマンダーにアドバイスしているか? 自分の立ち位置は良いか?(C/O & Foremanをバージにおろす)
6)地切り時クレーンの頭貨物の重心は常時合っているか?それを確認しているか? 
7)移動(振り込み)時、本船の体勢は維持されているか?
8)荷重分散(かならず計算)はされているか?
 ・チョークでPort Capt自らが積み付け位置を書く。(Foremanも立ち会わす)
   T/D ポンツン内のトランスビーム間にSkidが入っていないか?
   L/H 二重底内底板下の強度部材上に置く
9)指示通りの保定となっているか?

Save Cost
1)Dunnageの使い回しはしているか? 資材表要チェック!
2)どこもかしこもD-ringを打たせていないか?
3)早出し(day time出帆含)の努力をしているか?
4)注文して余った資材等を放置していないか?


1)Rain LGは本船に提出済みか? ないと特に用船ではM/Rにリマークを入れられる恐れがある。
2)大雨は荷役をやらない。風速10m/sec以上も注意

本船保守関係
1)Crewの能力・態度
2)仕組み船では、各種状態、メンテ状況を船主の視点から観察する。商売道具として不備はないか?


* 現在ポートキャプテンをされている若い方々に是非ともご忠告したい。
私の経験上ですが、ブレイクバルクの技術や知識などは広く汎用性があって需要が大きいというものではありません。はっきり言って、この世界は小さい。すごいと自惚れいるそのスキルは、港湾には溢れていますし、継承もされている。それしかない諸兄の転職などの機には非常に苦労します。一生そこでペーペー仕事にいいとこ遣いされて生きていくつもりなら良いですが、ある一定の社会的地位を築きたい(港湾フォアマン出身で社の重役になっている方は多い)と思う方々は、できるだけ早く船舶管理や工務、Manning、営業的センス、港湾ノウハウなどを習得できる場に身を移すことをお勧めします。その方がよっぽどよいです。活躍の場は多く、再就職にも有利です。
(ご自分が50歳になったときのことを想像してください。同期や後輩が港で重役になっているのに、自分は未だHold内で汗だくになって這いずり回っている。それどころか冠会社にいたらその年頃で肩叩きです。社内・外でほんとに悲しく、みじめですよ。)
あらゆる海運関連において手腕を発揮され中核を担うはずだったせっかくの資質を、その程度で腐らせるのはほんとうに忍びない。


ポートキャプテンの中には、極たまに俺がここのステベを育てたぐらいの思い上がったことを言う世間知らずな方がいる。パワーバランス的な観点から指示に従ってくれているだけで、「はいはい」と言ってはくれるが、そんなことやったって時間ばかり食うだけやろ?と、鼻で笑われていることを知らない。本来、ステベには何十年も脈々と受け継がれたやり方や、経験があって安全かつスピーディーに荷役を行える能力や勘がある。俄仕込みが物を言って仕事の邪魔をしてはいけない。ポートキャプテンなどと偉そうな名称に、尊敬されてるとでも思ったら大間違いで、港ではそもそも(その影が消えれば)単なるプランナー扱いである。入るか入らないかだけの人。それを自ら認識せず、いつまでもおだてに乗っていると将来えらい目に合う。

作者著書