Pyracy Clean up
ソマリアの海賊退治って?

われら海族 HOME


ソマリアの海賊退治になぜ我が国の自衛隊や海上保安庁が参加しているのでしょう?

国際海事局発表によると、2008年は全世界で293件の海賊被害があった。アジア地域が70件(内インドネシア28件)、ナイジェリア沖40件、そしてもっとも多かったのがソマリア沖(紅海・アデン湾92件&ソマリア東岸沖19件)の111件である。


アデン湾への自衛隊派遣是非について、賛成と答えた国民は67%だったそうだ。中々の高い数字だが、その反面このソマリア沖海賊問題で日本政府の決定に対し、強くご立腹されている方々も多くいらっしゃる。
理由はこうだ。
1) アデン湾(ソマリア沖)を通過する船に日本船はほとんどない。日本の海運会社は利益追求、税金逃れのために海外に船舶を登録している。まともに税金を払わない会社の船を、何故日本政府が護ってやる必要があるのか?
2) ましてや日本人が乗船している船なども非常に少ない。
3) 例え日本人が乗船していようとも、自衛隊がそれら日本人を護る必要性があるのか? 海外で働く企業戦士、または海外在住の留学生の全てを自衛隊が護りに行くのか? 何故船乗り、船会社にだけ特権を与える?
間違っていない。仰るとおりだ。一理ある。

もし、日本の海運会社の個々が「うちの船を護って下さい。」と政府へ陳情しに行き、そのために自衛隊が動いたとするならば全くその通り、都合がよすぎる。ど厚かましいにもほどがある。(本来は便宜置籍船の項でも述べたように、これも政策が悪いが為なんですけどね。法人税はちゃんと払っているであろうし。) しかし、内情は違うのです。ここを日本人はわからなくてはならない。
なぜ日本人の船員がここまで少なくなってしまったか(日本籍船ピーク時1580隻を記録したのが昭和49年その時の船員は56,833名。現在は2,000名強)ということにも抵触する話なので、詳しく述べたい。

先にも述べたが日本海事センターが行った調査によると、日本の貿易量に占める海運の割合を 「ほぼ100%である」 と正解できたのはわずか4.6%だったそうだ。まさか、飛行機で事足りるとでも思っているのだろうか?
飛行機は限られた極わずかの物しか運べないのに。。。 特に若年層で知識不足が顕著であると発表している。この数字を見るだけで、ソマリア沖問題で国民が誤解を招くのも無理はないと苦慮する。
「船がなければ日本の命脈は全て尽きてしまう」というこの根本が国民に浸透していないのだから仕方ない。船が止まるということは、原料・食糧の供給を断ち切られるということだ。そうなれば全ての産業が滞る。どれほどの失業者がでることだろう予想もできない。その上、物がなくなるのだから物価の上昇は止まらない。全ての根幹がここにあることを、日本の教育はなぜ繰り返し教えないのだろう?
大東亜戦争に何故陥ってしまったのか。何故敗戦となったのか。歴史が証明しているのに。

話を戻す。。。だから、ソマリア沖を通るのが日本船(船籍、船員の国籍)か否かの問題ではないのです。
ソマリア沖を通過する日本関連船は年間2000隻と言われ、10,000,000t もの日本に関係する貨物が動いている。勘のいい方ならここまで話して既に気付かれたことと思います。ここに危険があるということはこれに関連する日本企業(子会社、孫会社、関連会社を含めると膨大な数に上る)の全てがなんらかのリスクを背負いながら日々を過ごしているということになります。国民全てに影響を及ぼしていると言っても過言ではありません。国際協力に同調したのでもなんでもない。第一に、国民生活の安全を図るという見地から政府は必要に迫られて動いたに他ならないのです。

現在アデン湾では以下の推薦回廊(約1000km)においてカナダ軍、ギリシャ軍、インド軍、英軍、EU軍、中国軍、韓国軍など各国の海軍が、船籍の別なく商船の護衛行動(数隻の船団を組み12kn't〜14kn'tの速力で航行する商船を先導しまたは追尾して護衛)を行ってくれている。そりゃ日本も行かんでどうすりゃれ?

Corridor in Gulf of Aden officially named
International Recommended Transit Corridor (IRTC)
New coordinates in effect 0001Z 01 FEB 09

Coordinates of the IRTC corridor through the Gulf of Aden:
Full Details on the updated IRTC. http://www.cusnc.navy.mil/marlo/Guidance/Corridor.htm

THE IRTC EAST BOUND LANE BEGINS AT 045-00E BETWEEN 11-48N AND 11-53N. THE LANE IS ORIENTED ALONG A STRAIGHT LINE COURSE OF 072 DEGREES AND TERMINATES AT 053-00E BETWEEN 14-18N AND 14-23N.

THE IRTC WEST BOUND LANE BEGINS AT 053-00E BETWEEN 14-25N AND 14-30N. THE LANE IS ORIENTED ALONG A STRAIGHT LINE COURSE OF 252 DEGREES AND TERMINATES AT 045-00E BETWEEN 11-55N AND 12-00N.

(ソマリア東岸沖は600マイル以上離れての航行を勧告)

現在地中海やヨーロッパ方面へ行く船のうち、その危険が高い 1)低乾舷の船(8m以下) 2)低速度の船(12kn't以下) などを目安として、多くの船が喜望峰周りの大迂回航路を強いられている。
約3800mile(Singapore〜Gibraltar までを、アデン湾-スエズ経由と比べた場合)のロスである。仮にAv.speed12.5kn'tの船、1日20tの油を焚く、また燃料C重油の価格が$600/t だとすると、
(3,800mile / 12.5kn't x 24h) x20tx $600 = $152,000.-
たった1隻の油代でこれだけの損失です。これに船員費はかかる傭船料はかかる・・・はたまた何百隻か? TOTAL的な損失は莫大な金額になってきます。どうでしょうだんだんと海賊が身近に感じられてきませんか? 腹立たしくなってきませんか?

ソマリアの海賊は人質を傷つけないと言われている(実際は死亡者もでています)が、ハイジャック(あまりシージャックとは言わないみたい。)されると開放までの間、乗組員は銃を四六時中突きつけられ、総員ひとまとめに船橋等で拘束される。これが2〜3ヶ月続くのだから精神的苦痛は計り知れない。
一方、開放に向けた努力はどのようにされるかというと、イギリス辺りにネゴシエイターがいる。それを通じて毎日決まった時間に1〜2回海賊側ネゴシエーターと交渉するのだそうだ。最初は船の如何にかかわらず20億から30億とふっかけられるが、現在のところはたいてい1〜3億ぐらいで片付いているようです。
風の噂聞くところによると、ソマリアのある街では海賊景気に沸いているとか。
そして海賊行為はアフリカ全沿岸に拡大しつつある。やっぱり成敗せにゃならんでしょ?



作者著書