南シナ海・冬季モンスーン

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11月下旬になると、南シナ海に北東季節風(夏場は南西風が吹く)が卓越し始めることから、荒天域が発生するようになってきます。


この場合、小型・低速船は Singapore方面から日本/中国/韓国への復航ルートとして南シナ海中央ルート@を選択し、ルソン島と台湾間のバシー海峡/バリンタン海峡に向けると、荒天や強い北東風による速力低下を招きやすく、動揺も重なって貨物損傷を起こすことにつながります。
よって
冬季における当該船舶は、上記強風/荒天域を避け、安全面からも俗に言うPalawan航路(ボルネオ、比国西岸を経由する航路)Bを選定して北上することが一般に薦められる。

これは、北東季節風を緩和でき、順潮を得る利点とともに、航程が大きくなる(約160mile)のに加え、暗礁、オイルリグなども多く、また降雨が頻繁で航海に複雑という欠点もある。また、アラビア海でも述べたように、気象は擾乱/収束を繰り返し、冬季だろうと常時強風や波高域が発生しているとも言えない。したがって、中型船以上の船は必ずしもこれを採用しない。

内外的要因(貨物、船の大きさ、その頃1週間の海・気象)をよく観察して、機を逸せず南シナ海中央@ルートや下記比国北端ルートAなども併用したい。

(*Singapore向けの南下船にとって北東風は順風ですので、よほどの荒天が予想されない限りPALAWAN航路に進む必要はない。ここを間違えないで下さい。)

参考:比国北端航路A(冬季)
Mangkai Island 西からdirectで 台湾South end(鵞鑾鼻/ガランビ)に向けず、夏の航海よりやや東側を通る。具体的にはPrince Consort Bankを躱った 9-00N 110-00EあたりからSouthwest Cay(日本名:北険礁)11-25N 114-20Eの北西30mileを通って、Pilippine 北西端Cape Bojeador Light House(18-30N 120-35E) を12mileに見て台湾South endに向ける。他の航路(夏期航路/中央ルート@)より逆風弱く、Prince Consort Bankから北険礁北方まで偏東流を見るし、比島沿岸でも順流を受けるので冬季での小型・低速船に適する。状態良ければ西の航路に転じ行程を縮めるも可能。


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