アラビア海・夏季モンスーン

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季節によって風の吹く方向に傾向があって、卓越(他より群を抜いて長じているさま)することをモンスーンと言います。アラビア海では、10月から5月にかけては、北東の風が吹きます。これは冬季モンスーンです。

冬場は海の方が温かく(冷えにくい)、そこで上昇気流が発生(低気圧)し、これを補うように陸から風が吹きます。(低気圧の上昇気流は上空で冷やされて地上に降りてくるので、その辺り(陸地)は空気の量が増えて高気圧になります。)


一方、5月末から9月にかけての夏季は、陸地で海洋より暑くなり、そこで上昇気流が発生するため、海からの風(南西風)が吹きます。これを夏季モンスーンと呼びます。単にモンスーンと言えば、これを指すことが多い。
夏季モンスーンに依る風はアラビア海のみならず、日本では南東風、南シナ海では南西風、東アジアでは南東-東風などとなっており、これらは比較的穏やかです。

アラビア海における夏季モンスーンの擾乱*は2週間から30日同期で発生・発達・収束を繰り返します。(ずっと荒れっぱなしではない)
ですので、この間、不思議なほど穏やかな天候になる日もあれば、風速は20m/sを超え、波高は7mに達する場合もある。航行にはその見極めが大切で、発達時期は特に注意を要することになります。

アラビア海中央部分で発生する高波域は徐々にインド側に広がります。南西の風&うねりで、船は逃げ場を失うということになるのですが、陸地にぶつかる反流等によって沿岸付近は多少影響が緩和されます。それでも在来の小型船などは、うねりを斜め後方や、前方1〜2点で受けるようにして揺れを軽減させるジグザグ航行を強いられる.。(但し、
うねりが2方向からくる場合にはジグザグ航行も効き目が薄い

[*擾乱(じょうらん):高・低気圧・台風等が発生したり消滅したり時々刻々変化する大気の乱れ)]

鋼材などを積載している場合、例年この時期には、過大な動揺による貨物ダメージが発生します。その防止策として、(海賊対策、採算、その他を鑑み)インド沿岸12mileぎりぎり(領海内に入るとインド海軍がうるさいが、ときにはその内側も)の接航域を設定します。(例えば17-00N 72-30Eまで接航し、そこからホルムズ海峡に向かう等)。しかし、高波域が大きく広がってきたモンスーン最盛期には、上記緯度よりも更に北側まで、沿岸を航行することも必要です。
本船は推薦航路を進む共に、必要に応じ、
@船体動揺を軽減するため、ジグザグ(zig-zag course)に航行する。
Aセキュアリングチェックをしばしば行い、追加ラッシング等を施す。


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