航海日誌の書き方
Log Book Writing


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航海日誌(Log book) は船員法第18条によって備えておかなければなりません。
総トン数5トン未満の船舶は適用外のようですが、航海の記録は事故の際や以後の参考として、なんらかの役にたちますので、小型船舶の方も何かそれらしい物を継続して作成されますよう、お薦めいたします。
航海日誌には船用航海日誌、航海概要日誌、公用航海日誌、機関日誌などがありますが、ここでは、航海士が日々記述する船用航海日誌、その中でも記事欄に重点をおいてご説明します。
 
 
T 記載注意事項
1. 日誌文は主語を省略します。

2. 日誌文は過去形で書きます。

3. 記事の前には必ず時間をいれます。

4. ペン書きです。

5. 誤記による訂正・削除は二本線で行い、語句を抹消してはいけません。

6. 1ワッチ(4時間)分は6行しかないので、記載事項が多くなる場合はあらかじめ定規などで増行します。

7. 記述にはパターンや略語があります。

 
 
U 記載事項
1. 出入港記事 

2. 機関の使用

3. 変針

4. 荷役

5. 船内作業

6. 操練

7. 事故

8. 4時間毎の天候、海象、ログ

9. 時刻改正

10. 燃料・清水の補給

11. 毎時の針路、ログ(対水)とOG(対地)スピード 
  (日本の航海日誌では左ページに書く欄があります。)

12. その他 

 
 
V 航海時間と航進時間(会社によって少し違う場合があります。)
1. 航海時間
航海がはじまった時間です。航海時間は10分単位で記載します。
岸壁から出港する場合は全ての係留索を離した時間
   1000 Let go all shore line & left Osaka for Tokyo.
アンカー泊から出港とする場合は、抜錨の時間
   1610 Hove up her port anchor & left Kobe for Kagoshima.
 
2. 航進時間
その航海の連続した前進機関の使用時間のことです。港を出るときには前進・後進と機関を多用しますが、最後に使用した Stop eng. の次ぎにくる前進機関使用時〜入港前に使用する最初の Stop eng. までがそれにあたり、航海距離をこれで割ったものを平均速力とします。しかし、R/up (Ring up eng.:機関使用用意解除) 〜 S/B eng. (Stand by eng.:機関使用用意)までを航進時間としている会社もあります。
航進時間の単位は6分で記載します。
 
3. 航海時間と航進時間は赤ペンで以下のように印をつけます。
こんな感じ
 
 
 
W 決まり文句
ログブック記載には決り文句があります。
1. 4時間(当直毎)おきに ビューフォート風力、天候、海象 を記入。
 
      (風力3、雲量3以下晴れ、波なめらか)
 
2. 2400 (Mid Night)
   M.N.  Regulation ligthts were strictly attended to. Round made alls well. 
      (航海灯異常なし。巡検異常なし) 
 
3. 出帆時
  1515  Tested & inspected the steering systems & other navigatinal equipments & found them in good condition.  
      (操舵装置、その他の航海設備を点検し、良好であった。)
 
4. 物標通過の記事
  (1)コースをセットする前は
    2012  
P'd KamishimaEsaki L't on her starb'd side 3.1 off & S/co. <202>
       (神島燈台を287度、3.1マイルで通過し、コースを202度にセットした。)
 
  (2)コースをセットし、物標を正横に見て変針した場合     
       (友ヶ島燈台を90度、1.0マイル正横に見て、150度に変針した。ログ363)
 
  (3)コースをセットし、正横以外の変針の場合
       (御前崎を0度、8.3マイルに見て、285度に変針した。ログ1025)
   (4) コースを不定(Couse Various)とする。
     0130 Bore Nojima Si L’t on <005> 3.5 off & a/co. to var.
        (野島埼灯台を5度、3.5mile に見て、コース不定とした。)
       
 
5. 操練 (朱書きもしくは赤アンダーライン)
     Practiced fire, boat station & enclosed space entry & rescue drill, tested emergency equipments & apparatus found them in good condition.
     (防火及び救命艇操練並びに閉囲区域脱出総連を行った。非常設備・装置の点検異常なし。)
 
6. 日付変更線通過
    Cross the Date Line eastward in Lat. 38-40'N.
    (日付変更線を緯度38-40’Nで東向き通過した。)
    15th Nov. was repeated, as she p'd the Date Line on previous day.
    (昨日の日付変更線通過により、11月15日を繰り返した。) 
    Cross the Date Line westward in Lat. 38-40'N
    (日付変更線を緯度38-40’Nで西向き通過した。) 
    15th Nov. was skip'd as she p'd the Date Line on previous day.
    (昨日の日付変更線通過により、11月15日を飛ばした。)
 
7. 船内時刻改正
    Put ship's clock ah'd 15m for S.A.T. in Long. 160-45E.
    (経度160-45Eの視時に合わせる為、船内時を15分進めた。)
    Put ship's clock back 1h for J.S.T.
    (日本標準時に合わせる為、船内時を1時間遅らせた。)
 
8.荷役関係
  Commenced   開始 (初日)  
  Stopped    中断 (雨、昼食など)  
  Knocked off   中止 (雨等のより中途終了、荷役手配解け) 
  Resumed   再開 (二日目以降またはStopの後) 
  Finished   終了 (本日荷役終了)  
  Completed    完了 (揚げ切り、積み切り)  
  discharging   揚げ  
  loading   積み    
           
0830 Com’ced discharging cargo work w/ 2gangs at H/No.2&4.
  H/No.2 と No.4の2gangで荷役を開始した。
1200 Stop’d work for meal time.
   ランチタイムで荷役を中断した。
1300 Resumed cargo work.
   荷役を再開した。
1500 Stop’d work for the rain.
   雨のため荷役を中断した。
1530 Knocked off for the day. (Total discharge wheat2300MT)
9. 燃料・清水の積込み
Supplied w/ F.O. 150 KLs.
Supplied w/ F.W. 100 T
X ビューフォート風力階級
0 Calm   0 〜  1.0 kn't未満  0.3m/s未満
1 Light air   1.0 〜  4.0 kn't未満  0.3 〜 1.6m/s未満
2 Light br'ze   4.0 〜  7.0 kn't未満  1.6 〜 3.4m/s未満
3 Gentle br'ze   7.0 〜 11.0 Kn't未満  3.4 〜 5.5m/s 未満
4 Mod. br'ze   11.0 〜 17.0 kn't未満  5.5 〜 8.0m/s 未満
5 Fresh br'ze   17.0 〜 22.0 kn't未満  8.0 〜 10.8m/s 未満
6 Strong br'ze   22.0 〜 28.0 kn't未満  10.8 〜 13.9m/s 未満
7 Near Gale   28.0 〜 34.0 kn't未満  13.9 〜 17.2m/s 未満
8 Gale   34.0 〜 41.0 kn't未満  17.2 〜 20.8m/s 未満
9 Strong gale   41.0 〜 48.0 kn't未満  20.8 〜 24.5m/s 未満
10 Storm   48.0 〜 56.0 kn't未満  25.5 〜 28.5m/s 未満
11 Violent storm   56.0 〜 64.0 kn't未満  28.5 〜 32.7m/s 未満
12 Hurricane   64.0 kn't以上  32.7m/s 以上
           
           
Y 風浪階級
0 Calm   鏡のよう  波高0m  
1 Calm   さざなみ  0〜0.1m  
2 Smooth   小波  0.1〜0.5m  
3 Slight   やや波がある  0.5〜1.25m  
4 Moderate   かなり波  1.25〜2.5m  
5 Rought   波がやや高い  2.5〜4.0m  
6 Very rought   波がかなり高い  4.0〜6.0m  
7 High   相当荒れている  6.0〜9.0m  
8 Very High   非常に荒れている  9.0〜14.0m  
9 Phenomenal   異常な状態  14.0m〜  
           
           
Z 天気記号
b Blue sky   快晴 雲量25%以下  
bc Fine but cloudy   晴れ 雲量25〜75%  
c Cloudy   曇り 雲量75〜99%  
o Over cast   全曇 雲量100%(切れ間なし) 
r Rainy      
q Squalls   スコール    
s Snow      
f Foggy      
           
           
[ ベルブック
 航海日誌は通常ワッチが終了した後に記載します。変針や時刻改正などは決まりきった文句ですし、時間や行動も暗記すろことができますが、出入港作業ではそうはいきません。
その時、それらの記載を任される三等航海士はテレグラフを握り、ポジションを入れ、船首・船尾配置にキャプテンのオーダーをマイクで伝える立場にあり、大忙しです。時間と共に使用される機関、キャプテンのオーダー、水先人やタグボートの名前などを全て覚えられるはずがありません。そこで用いられるのがベルブック、メモ帳です。×はstop eng.. ┴はdead slow ah'd、┬はdead slow ast'n などと主たる記号はありますが、その三等航海士独特の記号でメモ書きしていきます。

作者著書