瀬戸内海の安全航行8つのコツ

われら海族 Index


外航船乗りから内航船に職場を移すと、以下のような厭味を必ず言われる。
「瀬戸内海を航れないだろう?」
「499で一人ワッチしたことないのか?」

私も内航に初乗船後すぐ、食堂での飲み会に毎夜立て続けに呼ばれ、船長に「素人が」と3日3晩同じことを言われた。このような発言をする方々の心理は説明するまでもないですね。とても残念。

明治4年、瀬戸内海(淡路市江崎)に初めて灯台(航路標識)ができた。備讃瀬戸東の入り口にある小豆島の地蔵埼灯台の初点灯は昭和26年である。そして昭和27年占領を解かれ、日本は国家としての全権を回復すると同時に航路標識も整備し始められる。そして、海上交通安全法が施行されたのが昭和47年である。明治から近代海上輸送が始まって以来この頃までは、瀬戸内を航海するのは至難の業であったように思う。

@ 内航船はまだまだマグネットコンパスが主流であった。
 (現在は、まずどの船もジャイロを積んでいる。)

A 中央ブイを含む航路標識が現在より十分でなかった。
 (現在は、明石海峡から関門海峡に至るまで4~5マイルおきにずっと中央ブイが入っている。)

B マニュアルによる船位測定が頻繁に必要であった。
 (現在ではECDISやECSは勿論のこと、GPSによって、船位の各時観測が容易であるから、見張りに集中できる。)

C レーダーの性能が良くなかった。
 (現在のレーダーは、スコープ上に沿岸線や主要ブイ、航路中央線などが表示されている。これによってもある程度の船位を予想できる。)

D AISがなかった。
 (現在は多くの船(500G/W以上は強制)の動向がAISによってわかる。)

こういった理由だが、瀬戸内航行には、その昔、経験と卓越した技術が必要だったであったであろうことは明らかだ。
しかし、昭和47年以降、法整備や物理的安全対策がされた上、さらに様々な航海計器の飛躍的進歩もあった現代においては、航海の仕方が自体が変わっている。それを昔と同様に語るのはナンセンスで、大きな違和感を感じた。というのが実際に経験した私の見解です。

車に置き換えてみよう。交通量の少ない田舎の一本道ばかり走っているドライバーや、10年ぶりにハンドルを握る方が、いきなり交通が輻輳する大阪や東京で冷や汗もかかず即対応して走れるか?という話である。結論から言えば当たり前だが難しい。怖さも感じる。しかし、2週間〜1ヶ月もあれば慣れるというのが大半ではなかろうか? 瀬戸内海の航行はこれに似ている。
「いや船は違う、ブレーキがない!」という方は、「ならば自動車のスピードは船の比ではない。」に反論できるだろうか?

瀬戸内海は、狭水道通過、避航や変針など舵を使うことが外航に比べ格段に多い。なので、簡単だとも決して言えないが、上記したように、現代では経験というより、「慣れ」の一言に尽きる。慣れとは事前に予測し、対応能力を高めることに他ならない。
経験豊かな人は、見張りがうまい。(他船の発見が早い→避航動作に余裕ができる)唯この1点に限りどうしても叶わないが、免状のある者なら、5〜6回も通れば必ず慣れます。
船は1に履歴(経験)、2に免状(知識)である。経験に勝るものはないけれど、ある程度の知識があるものは、それをかなりの部分で補えると私は考えています。それが学問・免状というものではないでしょうか。でも、こういったことを
表立って書いてるものはあまりなんですよね。

よって、ここでは、法規以外の部分で、8つのコツを指南する。というか、経験する前に予備知識として得て頂ければ幸いです。

(これだけやれば絶対に事故をしないというものではありません。各航法を遵守しつつ、以下を踏まえて習得時間を縮めるためのご参考にして下さい。)


まずは、よく言われることだが、「頭より先に船を走らすな!」というところで、瀬戸内海では特にそれが顕著です。では、あなたは今、概略でよいが瀬戸内海が見えるだろうか? 
例えば、備讃瀬戸を地蔵埼から294°に入って行くと、左に兜島→男木島、次に右の柏島を過ぎると、左右に宇高東のブイ、西のブイをかわる。直後、右に大槌、左に小槌を通過して、瀬戸大橋が見えてくる。という具合だが・・・。

これらイメージができないと、コツもヘチマもないので、その点をよくご理解して頂き、前に読み進めて下さい。もしまだそういったことになっていないなら、もう何回か瀬戸内海を通った方が良いかも知れません。

1) 中央ブイ(安全水域標識)を見失わない。
ブイを追いかけ、さらにレーダー&GPSを補足利用することによって位置は把握できます。交叉方位法やレーダーの距離などによって頻繁にポジションを入れてはならない。
(チャートを見るのは変針点や浅瀬の確認程度に)

そんなことに時間を費やさず、前(航路を逆航する小型船や外国籍船、航路内で操業する漁船は頻繁だ)、横(水道から急に現れる)、後ろ(フェリーなどの高速船が急接近もある)とにかく見張りに集中する。チャートルームに入って長時間出てこないなどは以っての外で、いかなる場合でも3分以上見張りを中断してはならない。(12k’ntどうしの船では、3分で1.2マイル接近します。)
 
伊予灘航行中、15分チャートルームで作業していて前を見ず、ブイに当てて下ろされたという男がいたが、当たるのが当たり前でよく大事故にならずそれだけで済んだなあと思う。恐ろしい。

播磨灘から周防灘に至るまで、中央ブイは途切れることなく4〜5マイルおきに設置されている。ブイの通過時には、出来る限り目視にて次のブイを発見していること。安全水域標識(図)は夜間、@出入り口や変針点で Iso 4sec  Aその他の水域でMo(A)8sec となっている。
*航路筋等の入り口付近のブイ(例えば、関門第2航路右舷標識、来島海峡西口)は、緑や赤のFl(2)となっている場合が多いので、中央ブイや他の左舷・右舷標識などと区別できる。



2)変針方法
ブイを重視するのはよいが、
@適切な距離を以って通過・変針すること。また、A変針は大角度を一気に操舵せず、何回かに分けて徐々に曲げる方が新針路に持って行きやすい。下手くそが操船すると、変針するたびに中央線に近寄るということになる。ブイへの接触や他船への接近を招くので注意したい。

変針後の正横距離は変針前の正横距離の√3/2となる。(n回変針すれば、(√3/2)nが正横距離で、相当近くなる。)
正横距離を一定に保ちたい場合は、ブイが正横より変針角の半分を過ぎた時点まで待って変針する。但し、大型船になるほど舵を切ってから効きはじめるまでにタイムラグがあるため、本船の舵特性を十分に把握しておくこと。
(図は350°から260°まで、正横距離を保ちつつ30°の変針を3回行っている。)



3)速度の遅い船の真後ろには絶対に入らないこと。
自船の大きさにもよるが、少なくとも2ケーブル以上離して追い越し通過できるようコース取りをする。

変針後などで真後ろに付けてしまった場合は、3〜5度以上コースを変え(水域の広い方へ)一早くそこから脱し、一定の距離を保てるに至って原コースに復帰する。またこの際、同航船や浅瀬があってサイドに出ることができない場合は、迷わず(1mileに近づく前に)エンジンをSlowまで落とす。こういった場面は非常に多い。
エンジン使用はキャプテンの特権のようになっているが、内航船であっても瀬戸内海でそれは当てはまらない。躊躇したおかげでぶつかった船は数多い。古い機関長が乗っている場合、クレームをつけることがあるかも知れないが、今どき瀬戸内でエンジン不使用を推奨する会社はまずない。

ただし、こんな船もいる
内航船の中には瀬戸内でもR/upする船がある。ランナップはエンジンの回転数をもう上げ下げ使用しないということで、機関的にはA重油からC重油に切り替えたり、発電機の並列運転を単発に変えたりする(舵効きが悪くなる)ことである。本来は燃料使用の関係から航海時間と航進時間を区別するために設定する。通常はCoastal から外洋に出るときがそのタイミングとなる。
しかし、こういった瀬戸内航海中にR/upする船でも、海上交通安全法適用海域に入る3mile手前になると、C重油からA重油に切り替え、発電機も2台回すのだからいったいなんのためのR/upなのかさっぱりわからない。船長が上がってくるとこだけS/B状態(書類面はR/upのまま)にしてどないすんねん?と、私は思う。

私が乗船した船の船主&運航者は危険な場合はいつでも機関を使用してください。と、ISM乗組員安全講習で言っていたが、そもそも瀬戸内でR/upすること自体をなんとかしないと言動に反している。実質、船長以外が機関を使用することはできない状態だった。
499などは当然瀬戸内でR/upなどしないから、航海士の意識もそういうことで、いつでも機関を自由に使用している。その点でよほど安全と言えよう。

C重油でも変速できないことはないが、これは安全講習の指導が実務内容に則していないことを意味する。講習より「瀬戸内ではR/upせず、自由に機関使用させるようにすべし」と船長・機関長への指導がまず最初だろう。PDCAサイクルが機能していない典型かもしれない。

是非とも考えて頂きたい。


4)行き会い船。変針後のCPAを予想し、安全距離を保つよう避航する。
   A船がB船と行き会って、避航するとき、その偏位Yは、

 Y = X ・ tanθ

となる。X(接近距離)4マイルで2°しか舵を切らなかった場合には、
1.4ケーブルしか離すことができない。従って、4マイルまで近づいたならもう少し大きく躱した方が良いということがわかる。
因みに、
 tan6°≒ 0.1
 tan3°≒ 0.05

と、なるから3の倍数で舵を切ると、行き会う時の最接近距離を暗算しやすい。
Xが4マイルとなって、6°舵を切れば、Y(最接近距)が4ケーブルとなるということです。Yを何ケーブル取るかによってθを逆算しても良い。
目安として、大洋航海では1mile以上、沿岸航海で0.5mile、瀬戸内では少なくとも2〜3ケーブルの最接近通過距離をもって行き会いたいが、操縦性能のよい内航小型船(ガット船や499船)や、ある船籍の無謀外航船等は1ケーブル程度で行き会い交わそうとすることもしばしばである。左対左ならまだしも、右対右でも同様であるから注意したい。早めにVHFで確認することを勧めるが、応答しない船も意外に多いということを知識として持っていてもらいたい。


5)横切り船の避航。
行き会い船への避航は3〜6°程度で躱せるが、横切り船への避航は大角度30〜70°など大幅な変針となることが多いので初心者は躊躇しがちになる。
しかし、当然のことながら近づいたところで舵を切る大きさはかわらないから、右の水域が許す限りできるだけ早く(接近距離3〜4マイルまでに)避航動作をとって、相手船にこちらの意志を知らせたい。


右方向に島や浅瀬がある場合は、@相当前の余裕ある時期(例えばA-B間7*マイル以上)に大幅に左変する。(左図) A機関を落とす。BVHFで相手船にその旨を告げる。など、適宜対処しなければならない。
(*@海上衝突予防法22条 灯火の視認距離(実際は2倍程度は見える)から、7マイルは相手船との見合い関係が始まる前の時期。A同様、視界制限状態時の航法19条5(1)にも抵触前。と考えられる。38条適用。)


6)湾曲部は、右小回り、左大回り。
港則法17条(港内の航法)や、海上衝突予防法9条(狭い水道等)でも規定されていてるが、これらと同様にA・B船とも左対左で躱せるよう両船とも左側に余裕をもつことを念頭におき、右小回り、左大回りとする方がよい。但し、B船は島付近の水深について十分把握しておくこと。

また、喫水の浅い小型鋼船ではB船よりさらに内側(島に接近して)を左折(右対右で躱そうと)しようとするものもいます。湾曲部は小型船をレーダーに捉えられないときもありますから、見えた時いきなりということになって危険です。右折船Bは注意しなければならない。


7)漁船への対応
漁船は白波が立っていると発見が遅れる。長距離レンジでは映りにくい。止まっているかと思いきや、急に走りだして、本船の前へ出ようとする。帰港を急ぐのか?航法無視!本船の後ろを通れば楽に躱せるものを、なぜこうも前を横切りたいのかと思うほどに突っ張ってくるものも少なくない。

備讃瀬戸では、コマセ網漁が盛んだ。じっとしていて躱しやすいとはいえ、航路内で留まって操業していることが頻繁です。漁船は神出鬼没で、その動きは奇想天外である。
漁船を避ける場合の目安には個人差があると思うが、舵角号令を発する方がよい。接近距離1.5マイルで5°以上、1.0マイルで10°以上、0.5マイルでは15°以上に舵を切るようにし、海域が許す限り大胆に針路変更をしたい。兎に角、早く発見し、目を離さないことが肝要である。

ビビりすぎもダメだが
大阪湾や播磨灘では3月にいかなご漁が解禁になって海一面漁船でいっぱいといった感じになる。もって行きようがないような状況(注意しつつゆっくり行けば結構道を開けてくれる)という表現が良いだろうか。これを気にかけたある船長が1ヶ月も前から、
「大阪向けになったらどうしよう。怖いなあ。行きたくないなあ。不安ですわ。」
と、乗組員誰かれなしに弱音を吐くようになった。しまいには冗談をいう乗組員に対し「私がこれほど心配しているのにくだらないことを言うのはどういうことか?」などと食ってかかったりする始末。
だいたい乗組員に失礼ですよね。
この船長は、パイロットになりたいが口癖だったが、もしそうなった場合、乗っていった船の船長に「いかなご漁をやってますので、僕怖いんですよ。もって行けないかもしれませんわ。」などと泣き言を言うのだろうか?「何しに来たんだ。下りてけ!」って言われますね。
船長が乗組員に不安を口にしたら終わりです。挙句その不安を乗組員に当たり散らしてどないするんでしょう。乗組員からたいそう顰蹙を買っていたことは言うまでもありません。
こんな船長もまあ珍しいが、しかし、航海士として多かれ少なかれ漁船にはナーバスにならなければ嘘である。十分気を付けて頂きたい。


8)潮流の影響。
瀬戸内では狭水道の通過が必須となる。狭水道通過時は、最狭部のみならず、入峡前から通過時、出峡後しばらくに至るまで潮の影響が続きます。それら一貫して大舵を切らないことが鉄則です。
また、最速部(≒最狭部)では保針に努めて(変針は避け)、できるだけ潮の影響が少ない他の部分で変針するよう航海計画を立てる。


特に反航船があるときや、順潮の場合は、一層小刻みに変針し、出来る限り大角度変針しない。(順潮でハードを切れば、効き始めたときに逆ハードをとっても止まらない現象が起きることもあります。)
重視線や航路目標、橋桁などがない場合は、レーダースコープ上の針路に水道幅で平行カーソルを置いて、ズレ(偏位)を検知し、Leewayを逐次加減して予定針路に乗せる。狭水道通過において、初心者はQ/Mに舵角号令するよりも、コースでオーダーする方が無難です。


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明石海峡
@ 大阪方面から明石海峡に入ろうとする場合、神戸沖第一号灯浮標から明石海峡航路No.3B’yまでの間で特に注意してほしい。神戸沖西側でもアンカーしようとしてスピードを落としている船が多数いるので早く発見し、これらはその尻を躱すべきである。また、右斜め後方より、フェリー等追い越し船が迫ることも多いので変針時再確認。明石海峡手前の垂水沖側に漁船が固まっていることもある。
航路出峡後、神戸に向かう東航船は、東方ブイを通過して左に曲げるが、都合その後大阪方面からの西航船と右対右でかわろうとする船も結構多い。

A 家島方面から明石海峡航路に入ろうとする船舶は、西方灯浮標を左に見て通過しなければならないが、これに対する明石海峡を西に出峡して備讃に向かう本船が避航船になるので、これら列をなして接近する船舶群を大幅に避けなければならないことがある。漁船が多く注意しなければならないが、右の可航域は広い。


備讃瀬戸
@ 中国地方と四国の間を結ぶフェリーや小型鋼船が航路を多数横切るので注意を要する。

A 備讃瀬戸東No.1B’yから瀬戸大橋手前までは248°で持って行って。そこから備讃瀬戸北に入る変針となるが、水島航路と交差する付近は少々広くなっている。a. 268°に切って与島寄りに走り、水島航路中央付近から247°にし本島に沿って走ったり、b. 248°で三ッ子島に寄り、そこから259°でまっすぐ牛島灯台の方に向けるコースでも良い。勿論、a-bのド真ん中も通れるが、得てしてそこに漁船が鎮座していることが多い。

B 備讃瀬戸北航路は、左舷標識だけで、出口まで右舷標識はない。



来島海峡
@ 橋と島が連なり、どの島の間(どの橋)だったか錯覚(思い違い)を起こすことがあるので、いくら慣れていても必ず海図で事前確認してから航路inすること。

A 通峡時の船間距離は6ケーブル以上としたい。

B 南流時、海峡の南北入り口手前で中央線を横切って、右舷対右舷で行き会う針路として来島海峡航路内に進入して行かねばならない。東航は安芸灘推薦航路No.4B’yを、西航は備後灘推薦航路No.1B’yを超えたのち早急に(鋭角に)舵を切るのが理想だが、来島海峡航路から出峡船には避航船となるから注意する。

C 南流最強時に中水道を通過するのが最も困難とされる。No.7B’y通過後、180°付近(当て舵が必要になる場合が多い)で馬島‐中渡島間に入り(最狭部で変針せず)、馬島を通過(橋から南に6ケーブル程度潮の影響が強い)して後、小刻みに127°へ持って行く。また、最強時(5k’nt以上で十分注意)を避ける航海計画を立てることも考えの一つに加えて頂きたい。(北流時は、逆に橋の北側で潮の影響が大きい)


奇跡の操船
180°→ 127°にもっていく変針は、潮に影響されてなかなか舵が効いてこないことがある。そこで、ある船長は、Port35°を必ず切る。するとどうなるかというと、舵が効き始めた途端、いくら当て舵をとっても止まらないということが起こる。(誰が考えてもそうなりますよね。) 止まらないからまた右に35°までとる。さらに次は左に35°、右に35°と舵をとって西航路まで突っ込んだりしながら、潮がようやく効かないところまで右往左往蛇行し続けるのが常なのである。どこでもよくハードとるんよなあ。
来島の中水道を南航するたび毎回これなのでほんとに肝を冷やしたもんだが、この船長は強運の持ち主(昔この方は犬吠埼沖付近で船が衝突沈没した際も無傷で救助されたらしい)で、どれだけ西航路にはみ出して行っても不思議と反航船がいないから事故にならないし、また浅瀬が来る前になんとか舵が効き始めた。ただ、我々は生きた心地がしないのである。
船の特性上仕方ないのかとも思ってもみたが、船長が変わるとこういったことをせずスムースに通過したからそうではないらしい。また時に凄まじい潮が海底に潜んでいるのかとも考えたが、レーダーで後に続く他船を何隻確認しても皆右往左往することなく変針しているのである。この船長本人が「いくら作戦を練ってもうまくいかないなあ」と漏らしたので、要するに船の特性ではなく船長の特技なんだろうと妙に納得した。
色々な人に聞いてみたが、中水道の南航でハードを切った人はいなかった。「それは危ないぞ」というのが主流だった。この船長のように運の強い方はそれでも良いのだろうが、普通はセオリー通り小刻み変針とし、中渡島・馬島間通過直後のコース設定には舵角操舵号令より航路目標を指示する方が良いと、私は思います。


関門海峡
@ 関門航路北口から入る東航船において、馬島と和合良島の間から、第二航路を南下し東航する船舶が見えた場合、No.10B’y付近の交差部で出会う恐れが強い。
第二航路航行船が避航船となる。(港則法施行規則38条1-7)

A 関門航路北口から入る東航船は、No.10B’y付近で関門航路を西航し第二航路へ入ろうとする船と交差する。
西航し第二航路へ入ろうとする船が避航船となるが、注意を要する。
B @及びAを嫌って第二航路から入り東航する船は多い。入航の際は、藍島東方にある古敷島横の浮標(六連島西水道第2号)Fl r(2)を早く見つけたい。

C 夜間東航する場合、右舷側は安瀬、若松、戸畑、砂津等の航路ブイが本航路の右舷浮標と重なって把握しにくい。No.10B’yのビーコンで確認し、それ以降は大瀬戸1号導灯に沿って航行する。

D 西航船は、下関導灯→彦島導灯→関門海峡海上
交通センターの建造物を目指し、その後は左舷浮標に沿って航行する。
*No.30B’yに差し掛かる頃、目の前で東航から下関港へ舵を切ってくる船があるので要注意である。

E関門海峡(早鞆瀬戸水路)を通航しようとする総トン数1万トン(油送船にあっては、総トン数3千トン)以上の船舶は、航行予定日の前日正午までに事前通報をしなければならない。通常出港地の代理店(外地からの入港船は入港地の代理店)が手配するので要確認のこと。



作者著書