貿易条件と海上運送契約

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貿易条件と海上運送契約
製品(輸出入)の売主:shipper(輸出者)と買主:consignee(輸入者)の間でかわされる貿易取引においては、どちらが運賃、積込み費用、保険、通関料を払うか、または損失責任(どの地点の事故で負担が輸出者から輸入者に変わるか?)などをどちらが引き受けるかの取り決めが非常に重要です。国によって解釈・錯誤がおこらないよう国際商業会議所がインコタームズ(incoterms)として主要13条件の国際標準を設けている。
そのインコタームズ(貿易取引条件)のうち、船舶や船内作業に関連する基本的な「海上および内陸水路輸送」と、片や売主または買主と運航者(船社)との間でかわされる海上運送契約について誤解しがちな部分を説明する。
貿易条件は売り手と買い手間の話で、船会社は介入しない。運送はそこに貿易の手段として存在するのみである。まずそれを念頭に置いてほしい。船社が運送中に起こした事故による損失であっても、売主と買主に限定しての責任の範囲を定めている。(実際は、事故について売主なり買主が船社に求償するのだが)
売主、買主に損得のバランスがとられ汎用性の高いFグループ、Cグループを例に挙げて説明する。

運賃抜き本船渡しFグループ

FAS(Free Alongside Ship)
船側渡し条件。売主は輸出港にある本船の船側までの費用を負担する。岸壁等に置かれた時点で損失責任は買主に移転する。
FCA(Free Carrier)
コンテナ取引で行われる。売主が買主指定のコンテナヤードまで搬入すること。搬入後の損失責任は買主にある。
FOB(Free On Board)
本船渡し条件。売主は本船に積み込む(船内荷役料金)までを(費用&リスク)負担する。
受け荷主=買主側が運賃+保険料を負担する。従って買主に船社の決定権があり、その手配を行う。

運賃込み本船渡しCグループ

CFR (Cost and Freight)
売主の費用負担は輸入港着岸まで(船内荷役積込み費用+海上運賃)である。荷揚げ費用を誰がもつかを取り決めておく。(後述する。) 損失責任は輸出港において本船に荷物を積み込むまでを負担する。保険料は買主が負担する。
CIF (Cost, Insurance and Freight)
費用負担と損失責任はC&Fと同様で、費用に売主が負担した保険料を含んでいる。
(C&F またはCIFでは、運賃が売主もちになっている。この際、売主と船社との海上運送契約でバースタームになっていれば、売主が払う運賃の中に当然輸出入両端の荷役費用は含まれているわけだが、前述のように売主の費用負担は輸入港着までである。しかし、その荷揚げ費用は、買主に請求できないことになっている。)

本船甲板渡しは、ちょっと無理!(インコタームズと海上運送契約の整合性)
FOB、C&F、CIFの売主の費用と損失責任について、インコタームズ2010では「本船の船上に貨物が置かれた時点」となっている。特にFOBにあっては「本船甲板渡し」と記していることもある。しかし、それらは厳密に言えば矛盾があるというか非現実的である。
通常、クレーンのオペレーターは船内作業会社の作業員が操作する。それは陸岸の玉掛(Hook on)から船倉内の玉外し(Hook off)、その後の船倉内配付けまでの一連の作業を船内作業とされるので、そこの途中で費用を切り替えるだの、責任負担が変わるだの言われても机上の空論です。また荷主だろうが船社だろうが、港湾荷役業者にそんなところで区切って依頼できない。上述のFOBでは、売主が積込み船内荷役を負担するので、買主が船社と結ぶ海上運送契約でバースタームはないように考えられる。
実際は、「鉾下まで」が慣例だろう。鉾下までが沿岸荷役、吊り上げからが船内荷役となっているので、そこで費用&損失責任ともに移転するのが現実に則している。一方、売主または買主が船社と結ぶ海上運送契約ではこの「鉾下」を基本に契約し、手配されるが一般的である。売主は岸壁(上屋)にトラックで搬入し、その後沿岸荷役を手配してトラックから卸し、貨物を本船の鉾下まで運ぶのである。だから、FOBでのバースタームも在り得るのです。
損失責任の負担は、インコタームズ2000で「本船舷側のハンドレールを超えた時点」となっていたものを、インコタームズ2010で上記のよう「船上に貨物かおかれた時点」に改正されたが、未だ海上運送契約の条件とは整合性がとれていない。
ゆえに本著はFOBを本船沿岸サイドで切り変えられている感の強い表現の「本船渡し」とした。

― 通関関連 ―

輸入通関申請する場合はCIF価格を基本にして関税がかかりますので、輸出者(売り手)が輸入者(買い手)宛に作成した仕入書(Invoice)にFOB建てと書かれている場合、輸入者払いの運賃、保険証明書が必要になります。


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