IMDGコードとIMSBCコード

われら海族 Index


IMDGコード: (International Maritime Dangerous Goods)国際海上危険物規程の危険物の分類を以下に示す。
Class1 火薬類 Class5 酸化性物質、有機過酸化物
Class2 引火性ガス・非引火性ガス、
毒性ガス、非毒性ガス
Class6 毒物、伝染性病原体
Class7 放射性物質
Class3 引火性液体 Class8 腐食性物質
Class4 可燃性固体、自然発火性物質、
水反応可燃性物質
Class9 有害性物質
IMDGコードでは、海上輸送で個品危険(品)物を輸送する場合の容器の要件、運送基準(甲板上、甲板下(貨物艙)への積載可否または全面禁止)などをClassごとに定めている。積載には船長の許可を得ることも要求される。
現在日本では内航船(SOLAS適用外)にも外航船と同等の要件が適用されるようになっている。

例えば、中古車などの積載はClass9の適用を受けるので、SP961に規定された船(船舶防火構造規則及び船舶消防設備規則の規定による設備を有し、自走用の燃料を有する自動車を積載することが認められた貨物区域に積載される場合)以外では、燃料タンクを空にするなどの措置を施さないと甲板上貨物としてしか積載できない。船社に甲板下貨物として中古車を取り扱って欲しい場合には、DG application formを提出するのみならず、ガスフリー証書も求められます。


IMSBC コード:(International Maritime Solid Bulk Cargoes)固体ばら積み貨物に関する安全実施規則は、穀類を除くすべてのバラ積み貨物を下記の種別に分け、
  

種別A:液状化貨物
 (運送許容値を超える水分を含んだまま船に積載すると液状化する貨物)
 ニッケル鉱、水酸化アルミニウム、鉄鉱粉(ミルスケール)、マンガン鉱粉、亜鉛スラグ、石炭スラリー、微粉鉄鉱石(iron ore fines)、製鋼廃棄物(mill scall)等 
(S/F 20ft3/LT以下で要注意)
種別B:固体化学物質
 (酸欠や引火など化学的危険性があるもの)
 硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、コプラ、魚粉、酸化鉄、シードケーキ、亜鉛灰等
種別C:種別Aまたは、B、両方の危険性を有しないもの
 アルミナシリカ、アンチモン鉱、ボーキサイト、セメント、ホウ砂、クロム鉄鉱、鉄鉱石(iron ore lump & pellet)、石灰石、コークス、塩、尿素(urea)等

種別ごとにその
輸送要件を定めたものです。(但し、船舶の構造・設備によって積載できない場合もある。)
1)船級クラスによる適合証書やローディングマニュアルが必要。
2)荷主は、船積み前、貨物に関する特性・運送要件を記した適切(主管庁に承認されたもの)な資料(品名、種別、S/Fm3/t、貨物密度kg/m3、静止角、運送許容水分値&水分測定表、荷繰りの必要性、通風、清掃要件等)を船長に提出しなければならない。
また、TML(Transportable Moisture Limit)輸送許容水分値に関する証明書は船積港の主管庁が認めた機関が発行するものでなければならない。

液状化貨物に対する積荷前の具体的要領:
その貨物のFlow Moisture Pointの90%がTMLで、[液状化を起こさない為の水分値の限界=輸送許容水分値] ということになる。したがってTML8%ということは、積載できる貨物の含有水分は8%未満でなけれならない。(積載する貨物のFMPで提示された場合、その90%未満の含有水分値でなけれな輸送できない。)
製品を作ったメーカーからその貨物のFMP証書やTML、更には積荷直前の含有水分値のCERTを提出させることが望ましく、雨中荷役は厳禁である。また、当該積込船には過去の転覆事故例等を周知する。
3)IMSBCコードの種別Bは、IMDGの個品危険物とかぶっている物が多い中、Class1(火薬類)、Class5.2(過酸化有機物)、Class6(毒物&伝染性病原体)について、これらが、ばら積み(大量輸送)に不向きであるためか、実績がないためなのか、IMSBCコードとしての規定がない。その一方、石炭のように容易に発火するものは、種別Bとは別に、「ばら積み時のみ化学的危険を有する物質」MHB(Material Hazardous only in Bulk)として特に規定されるものもある。

 
ばら積み貨物が液状化するメカニズム
1)船の振動や動揺によって、貨物が圧縮されるので、粒子間の体積が縮まる。
2)それが水分を押し出す力となる。
3)隙間の水圧増加は粒子同士が結びつく摩擦力を減少させて、貨物が泥酔のようになる。
液状化が発生した場合、貨物は移動し船を傾ける。これは必ずしも液体のように反対舷に戻ることもしない。しかしながら、傾斜を解消するため不用意にバラストを入れると、バラスト+貨物流動の相乗効果を招き大傾斜、転覆につながる。特にトップサイドにバラストを張ると復原性も減少するので超危険です。
以下の貨物では、液状化は起こりにくい。
1)貨物の粒子が極めて小さい場合。
2)貨物が大きな塊である場合。
3)空気を多く含み、水分値が低い場合。

*船長は種別Aを積載する場合、サンプル品を缶等に入れ、衝撃を繰り返して流動状態にならないことを確認する。また雨中荷役は厳禁である。


恐ろしい! ばら積み貨物液状化と転覆のメカニズム
(GIFアニメ)
@〜C振動・動揺・衝撃などにより貨物が液化し、ヒール等の影響で流動が起こり、左舷側に船体が傾き始める。
Dアホチーフが全力で右舷側にバラストを注水し始める。(やめときゃいいのに、ご丁寧に復原力減少を招くトップサイドにまで)
E〜Fバラストと流動が均衡し、傾斜が止まる。
G貨物流動が止まり、バラスト力によって、傾斜が戻りは始める。
H見かけ上、Uprightになるが、その実、反対舷側に流動が始まる。
I〜L流動が加速しはじめ、徐々に傾きが大きくなっていく。

Mアホチーフがまたしても全力で左舷側にバラスト注水を始める。(右舷側を抜いても同じ)
N〜貨物の流動は右舷バラストにより既に大きな加速度を与えてしまっている。(貨物の粘度はバラストに直反応しない。時間差を生む)ので、左舷側にバラスト注水をしても追い付かない。

ついに転覆。

貨物が液状化した場合には、バラストでコントロールできるると思わない方が良い。
外から注水するのではなく、右舷側から左舷側に直バラストを移動させれば傾斜は早く戻る。またトップサイドをグラビティーで捨てつつしたりしても有効だが、時間稼ぎに過ぎない。船はまたどちらかに傾き始め、最終的にはコントロールできなくなる。


最も恐ろしいのは、無知です。
どうかお気を付け下さい。

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