保税運送(海路:ICT、陸路:OLT)

われら海族 Index


本邦へ到着した貨物は通常、保税蔵置所(上屋・倉庫)に搬入されて、通関手続きをとり内貨にしますが、開港、保税地域、税関官署・空港、他所蔵置許可場所(備蓄タンカー等)の相互間に限って外国貨物のまま運送することができる。(関税法63条)

保税運送(海路:Inter Coast Transport、陸路:Over Land Transport)
運送に使用できるものは、船舶(艀を含む)、航空機、車両、鉄道など多岐に及ぶ。内航船というと、内国貨物の移動に供する船というイメージが強いかもしれないが。原油、穀物、塩、コンテナ(フィーダー)など、外貨を保税運送する内航船も非常に多い。

保税は関税を徴収されていない状態(外貨)を言う。これらに対し、輸入申告をして関税を払い、輸入許可となったものを内貨といい、国内業者(輸入者)は、そうなってはじめて当該貨物を引き取ることができる。
保税地域とは外貨を保税のままの状態で置いておける場所である。外国貨物は必ずここで通関を待たねばならない。


@指定保税地域
 国や、地方公共団体、地方港湾施設の管理を行う法人で財務大臣が指定したものをいう。コンテナヤード等が代表的で、蔵置期間は1年。全国に88カ所ある。
A保税蔵置場
 保税上屋、保税倉庫と言われたものだが、平成6年の関税法改正で1本化された。建物(倉庫等)のあるなしは関係ない。外貨の積卸し、運搬、蔵置ができる場所として税関長が許可したもの。蔵置期間は2年。全国に約5000カ所弱ある。
その他、保税工場、保税展示場、総合保税地域などがある。

では、なぜ保税運送が行われるのか?
陸路コンテナヤードから蔵置所までのOLT
・LCL(Less than Container Load)貨物の場合は、一つのコンテナに複数荷主の貨物を混載しているため、通関前にCYからCFS(Container Freight Station)に移しデバンニングしてそれらを仕訳しなければならないのでOLTでそこまで運ぶ。
*FCL(Full Container Load )貨物の場合は、コンテナ1本ごとの荷主となっていて、CYでの通関が多いのでその必要がない。。
・冷凍・冷蔵貨物は、冷蔵倉庫(保税蔵置場)へ搬入し、デバンニングして数量を確認した後に通関(倉入れ通関)するのが一般的です。こちらもOLT.。
*これら海上コンテナの陸送はドレイと呼ばれます。

主要コンテナヤードから地方コンテナヤードまでのフィーダー(ICT)
内航コンテナ船が担う大きな仕事の内の一つです。船社のサービスで外航本船が入港しないところでもコンテナを海路運送します。
PORT OF DISCHARGE(陸揚港)・・・東京
PLACE OF DELIVERY(荷渡地)・・・仙台CY
上記では、船社の手配で東京港から仙台CYまで内航船によって回漕(FEEDER)します。
指定保税地域から適宜地方港へ出荷する。
蔵置期間は上述の様にあるので、荷主さんは保税のまま置き、市況によって売り買いを施します。安い時に外地から買い溜めし、国内相場によって高く売り捌いたり、外貨のまま(関税をかけないで)需要のある他国へ再度出荷したりもできます。内航船や近海船などがこの二次輸送に使用される。

保税運送の手続きが不要な場合(関税法施行令52条)
外国貨物を保税運送する場合には、その旨を税関長に申告し、承認を受ける必要があるが、
@郵便物。
A本邦に到着した外国貿易船等に積まれていた外国貨物で、引き続き当該外国貿易船等により、または他の外国船等に積み替えられて運送されるもの。
B輸出の許可を受けて外国貿易船等に積み込まれた外国貨物で、当該外国貿易船により、または他の外国貿易船等に積み替えられて運送されるもの。
については、保税運送の手続きを要しない。
但し、
外国貨物を岸壁に仮陸揚げ(積み替え、荷繰りなどのため)しようとするときは、税関に届けなければならないとなっています。(艀中扱いの輸出通関を切って艀に積んである貨物を岸壁に仮陸揚げするのも同様です。)

*こういうことと知らず、艀どりなどで既に通関を切り外貨となった貨物や、他港の貨物を好き勝手に岸壁へOncelandしようとする一航士やパープリンポートキャプテンがいるので、フォアマンは十分注意されたい。


作者著書