Flag of Convinience
便宜置籍船/仕組船って?

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便宜置籍船FOC(Flag of Convenience)は、元々第二次世界大戦中に交戦国からの攻撃をさけるためのカムフラージュ効果を期待して始まった戦時対策だが、戦後はその趣旨を一変し、節税、船員費の削減、法令緩和を主たる目的として発展していった。
日本でも国際競争を勝ち抜くためとの理由をこじつけて同様の策をることとし、1970年前後を境に急速にその数を増やした。
昭和49年が日本船籍登録のピークで、その数は1580隻を誇ったが、現在ではたった93隻となっている。国土交通省が先日公表した非常時の最低保障水準を前提とした必要規模としての日本籍船約約450隻確保を大きく下回っている。有事の際、必要数の物資を日本に運べないということですね。「有事なんかあるかい!」と、高を括ってよいものでしょうか?ならば何故EU諸国、アメリカはこれらを危惧するのか?何故今躍起になって対策を講じようとするのか? それは 供給の遮断が大きな戦略の一つとなり得るからですね。
例えば、中東に大きな戦争が起こったとする。自国の船員だから危険をおかしても油をとりに行ってくれる。なんでフィリピン人船員が日本のために命をかけてくれましょうか? みんな下りてしまいますよ。


便宜置籍船とは、日本の外航海運会社が上記に示した理由から、海外に設立した子会名義で建造(売却)した船舶を、その国籍で登録・保有させた場合に、当該その船を指す。さらにこの船に外国人船員を乗せて親会社が再び用船することをチャーターバックというが、船員費削減までを目論む現代ではここまでが便宜地籍船として利用する一連のスタイルと考えてよい。仕組船(tie-in-ship)と呼ばれるものだ。この際、配乗・船舶管理をも別会社、または別子会社に委託し、親会社は運航のみを行って経費節減の粋を完成をさせていることも多い。
よく混同されるものにマルシップというものがある。日本籍船を海外に裸傭船に出して、これを傭船者の配乗権で賃金の安い外国人を乗せ、チャーターバックしなおして運航する船をいう。

日本人と外国人との混乗は新マルシップなどと呼ばれる。かつて、日本船はその船名の末尾に丸をつけていたため、それら日本船団に対し敬愛の念を込めて丸シップと総称されていた訳だが、現在ではこれを文字り皮肉ってマルシップと呼ばれる。

税金対策と言うが、ではどれほど違うのか?企業としての法人税はまた別に取られます。
日本船籍の場合
 1)登録免許税
   船価 x 1.5/1000  現在は特別措置で1/1000となっている。
   ボッタクリ!(そもそも税金はそのようなものですね。)

 2)固定資産税(償却資産税)=価格評価額 x 税率1.4%
   課税評価額は以下の式で求められる。
    初年度   価格評価額=取得価格 x (1-減価率 r/2)
    2年度以降 価格評価額=前年度の価格評価 x (1-減価率 r)
    ただし、評価額が取得額の5%より少なくなったときは、取得額の5%がその価格評価額となる。
    減価率 rは定率表より求める。船は耐用年数を15年としてるため、
    減価率 r=0.142
   これをもとに計算しますと、取得価格20億円の貨物船は初年度2600万円、 6年目で1400万円、15年
  目でも350万円の固定資産税となります。 ふざけています。200億のLNG船などもありますからえらい
  ことになります。これが四方海に囲まれた日本がやることでしょうか?
  ということで現在は、国際船舶は期限付きの特例により、償却資産税は、課税標準(価格評価額)を
  1/15にして税率を乗ずることになっている。(続けて平成19年から5年延長中)
  それで1年目:173万円、 2年目:148万円・・・・・6年目:94万円・・・・・15年目:23万円
  となる。これでもまだまだ高い。

一方、便宜置籍船としてパナマ船籍にすると、
 1)登録料 15000t以上 $3000.-
 2)年次税  -do-     $3000.-(毎年) 15000tを超えてG/W1トンごと10セント加算。上限$6500.-
 3)手数料   all     約$1500.-

そりゃ皆さんパナマにしまっせ!

次に、船員費削減のために外国人(フィリピン人)を乗せた場合のWAGEはどうか?
ITF(国際運輸労連)&IBF(国際団体交渉協議会)の労働条件を考慮した概算金額/月です。(2009年)
Capt. C/O 2/O 3/O CE 1/E 2/E 3/E R/O BSN AB OS OLR1 OLR2 C/Ck MSM
USD 6500 5500 3500 3000 6400 5500 3500 3000 2000 1500 1300 800 1400 1300 1500 800
21名船で月5万ドル超、年間に換算しますと約65万ドルの船員費ということになる。
これを大手で日本人の船・機長を乗せた場合には、100万ドルを超えるのは必至で、仮に21名船全員を日本人に乗り組ませるとすれば、300万ドル{日本人を乗せる場合は単に21名の給料を払うばかりでなく、予備員(休暇中の自宅待機者)の給料もそれに付加せねばならない。したがって実費よりも1.4倍程度と考えての数字。}は必要になるだろう。
ここのところ船員不足に拍車がかかり、優秀なフィリピン人船員は引っ張りだこで、Wageは急騰している。例えばCapt.の場合、2007年からたった2年で月平均にしてUSD2000.-〜3000.-、 C/OでUSD1500.-も上昇している。そのうち日本人船員の給料に追いつき追い越す日がくるのではないでしょうか?
その時にはもう日本人船員はいませんね。
また違う発展途上国の船員を探して・・・雇って・・・高騰して・・・繰り返しですか?

日本人船員の給料が高い?いったい誰と、何を比べて?
船乗りの離家性をなんと思っているのでしょう? 日本がおかれている地理的条件、資源確保の重要性を省みず、なんのために自国の船員を追いやってしまったのでしょうか?
給料が高いのは当たり前です。医者や飛行機乗りの給料が高いのと同じ、それなりに理由がある。
給料が高いから外国人に換えた。じゃあ、陸上の給料高い人もみんな外国人に換えたらいい。そしたら会社は儲かります。上に示したように人件費は1/4で済む。「相手先と会話が通じなくなる!」そうかそれなら相手先も外国人に入れ替えてしまえばいい。中東のカタールやUAEなどのように、日本もみーんな外国人に働かせばよい。。。。。こんなことは馬鹿げているでしょ?
便宜置籍船もいい。マルシップもいい。企業が利益を追求するのは当たり前の話である。陸上の製造業などもどれほど海外に工場を移したか知れない。しかし、「国際競争に打ち勝つため」などのまやかしの旗印の下、「仕方のない選択だ。」などは限度がある。わきまえなくてはならない。それをやるのは誰か?政治だ! ギリギリのところで線を引き歯止めをかける。法律を作るだけではない。またいつかの心無い首相がやったような規制緩和ばかりもよくない。援助し、教育にも携わなければならない。海運は票につながらないからと、蔑ろにしてきたのである。
メーカーや海運の別はなにもない、国外に雇用を移す企業へはいかなる税制優遇をも絶対にやってはならない。国内に雇用を生む、または継続させる企業にこそ税制を優遇し、さらに手を差し伸べるべきではないだろうか?
銀行の破綻は国民の生活を脅かすことはわかっていたのか税金を惜しみもなく注ぎ込んだが、海運が破綻しても日本は沈没する。海運大手6社+1と言われた時代が終わりを告げて久しい。今は大手が3社となった。そして幾多の海運会社が潰れた。これを淘汰された・・・で済ましてよいのでしょうか? プロ野球は巨人と阪神だけでは成り立たない。日本の海運が破綻しているとは言わないが健全な状態ではない。政治家はまるでわかっちゃいない。

イギリスは日本と同じ島国だが、彼らは自国の船員を常時2万人程度必要だと考えていると聞いた。船員の地位も高い。イギリス国民は、海運が自国を支える根幹だと認識しているからに違いない。
どうして2万人も必要なのか?簡単だ。"船乗り上がり"もそれだけ必要なのだ。港湾会社、Pilot、港湾局、Steve、代理店、サーベイヤー、教育者、造船、機関関係、勿論船社も。とにかく水周りには経験者や教育された者が必要だ。船乗りを全うして辞めてしまう人も多い。少なくとも2万人いないとイギリスではそれらを恒久的に確保できないということになるのだろう。日本は昭和49年のピーク時に56,000名もの船員がいたが、今ではたった2,000名しかいない。国土交通省は5,500人の船員が必要だと試算したそうだが、そりゃ船を動かすだけの人間でしょ。イギリス的な考えには未だ至っていない。イギリスでいるものは日本でもいるのだ! 開港数や輸入量から考えても日本なら英国の2倍は必要と考えられるかもしれない。

イギリスをはじめEU諸国の擁護政策も様々だ。トン数標準税制(法人税)、船舶償却制度の優遇、船員所得税の免除・軽減、船員の社会保険料の軽減、船員派遣・帰国の援助などなど。ちなみにタイでは国立商船大学の学費を全額免除としている。
日本はどうか?海運界に優遇措置をとると、差別だへったくれだと○○市民団体などが吼えたりする。国と言ったら、「外国人船員で足りるようになったなら商船学校はもういりませんなぁ」じゃあ定員削減、廃校。そうかと思えば、船員が足りなりなくなってきた、水先人が足りなくなってきたと、ろくでもない金儲け主義の誰かに知恵をつけられ、やりくった場当たり的、一過性の法律を作る。学校は学校で全寮制の廃止などと靡く。すべてにおいて短絡的過ぎる。
現在、郵船は船員600名を抱え、商船三井、川崎汽船がそれに続いて日本人船員を雇用しており、この三社で推定1500名。残り5〜600名がその他の外航会社で働いていることになるが、政府は昭和49年オイルショック以降、海運会社がことごとく潰れていくのをなにもせず指を銜えて見てきた。その結果がこれだ。受け皿がないのに今更どうやって船員を5500名にも増やすのか? 大手三社にあと1000名づつ船員を押し付けるとでもいうのか? 英国のように健全な形になどにどうやって戻せるのだろうか?まともに対処して50年はかかる。

日本では外航船員のうち部員さんの職場をほぼ完全になくしてしまった。これはどういうことかというと、二つの大切な役割を失ったということに他ならない。一つはその技術の継承。もう一つはたたき上げ船員の育成だ。「幹部候補生学校だけあればいいじゃないか?」などの考えは大きな間違いです。底辺を広げなければ優秀な人材は育たない。サッカーがJリーグだけでは強くならないと同じです。
日本人の部員さんはワイヤーを刺してもうまかった。日本人が乗ると船は長持ちした。叩き上げの船長は操船も人使いもうまく優秀な方が多かった。

日本は全くバカなことをしてしまったものだ。


作者著書