船の避難体制

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発達した低気圧や、台風が接近する場合、各港の港長は警戒(避難)体制を発令する。
それらの発令時期や、指針や措置は、港の特徴(地形、影響の受けやすさ等)によって異なるが、大まかに共通する部分とそうでない部分があるので参考にされたい。

第一警戒体制
どこの港も共通して荒天準備と考えてよい。
発令時期基準
地方港では、強風域(風速15m/s以上)に入ると予想される数時間前というのが、一般的のようだ。
徳山:強風域に入ると予想される6時間前までに行う。
鹿島:強風域に入ると予想される9 時間前。
金沢:台風の暴風警戒域が12時間以内に到達されると予想される場合。
などだが、大阪港は、台風の暴風域に入るおそれがあると判断された場合、千葉港は強風域が達するまでに荒天準備が完了することを目安に発令する。など、時間によらず漠然としたものになっている。
講ずべき措置
概ね、
1)台風等の動向に留意し、荒天準備をなし、必要に応じて運航できるよう準備する。
2)荷役中の船舶は、天候の急変に備え荷役を中止出来るように準備する。
3)VHFの聴取
だが、大阪港では原則として1万t以上の港外退避。1000t以上の入港見合わせ。金沢などでは、第一警戒体制であっても錨泊中の船舶は抜錨し安全な海域に避難(避泊は沿岸から12mile外)すること。など、より厳しいことを求める港もある。

第二警戒体制
これは避難勧告と位置付けられる。
発令時期
地方港では暴風域(風速25m/s以上)にかかると予想される数時間前の発令が多い。
徳山:暴風域に入ると予想される時刻の6時間前までに行う。
鹿島:当港が強風域に入ると予想される6 時間前。
金沢:台風の暴風警戒域が6時間以内に到達されると予想される場合。
だが、阪神港(大阪区、堺泉北区)及び阪南港が台風の暴風域に入るおそれが必至と判断された場合、あるいは両港が重大な影響を受けると判断された場合。千葉港では、東京湾に強風域が達する前までに避難体制が完了することを目安に発令する。また、要嚮導船の※嚮導時間を考慮し、日没前に作業が完了し安全に避泊できる時期に発令する。などと複雑だ。
※嚮導時間=(要嚮導船/パイロット数)×2.0(時間)
講ずべき措置
直ちに港内、または港外の安全な場所に避難する。など概ね、離岸・離桟を勧める。(入港制限もある。)
その対象船は、
千葉港が500t以上(同入港制限)、京浜港や大阪港で1000t以上(同入港制限)。鹿島港
で、3,000DWT 以上の船舶は、原則として、港外へ避難すること。同3,000DWT 以上の錨泊中の船舶は、速やかに抜錨し、安全な海域にて漂泊すること。としている。また、徳山港では、船舶は直ちに港内または港外の安全な場所に避難する。となっており、トン数に限定してない。
解除時期
これら警戒体制の解除時期は、台風の影響圏外となったときや、強風域から出た時とされる。

離岸が係留継続か?
第二警戒体制(避難勧告)と言えども、「勧告」は申し出て勧め、促すという意味で法的な強制力はなく離桟の決断はあくまでも船長の判断である。(着岸中に発せられる避難勧告については、法的な強制力はなく、離桟の決断はあくまでも船長に委ねられる。と、船長協会も見解している。但し、これによって生じる責任は別)

避難命令は勧告とは別で、違反すると罰則を伴うが、日本の港では法的にそういったものはなく、それより1段階軽い避難指示さえも出ない。
ただ、他船への接触や、岸壁・船を壊すと保安庁に呼び出されたり、オフハイヤーになったり、修理したり、相当面倒くさいし、高くつく。よって船長は、第二警戒体制ですみやかに離桟することがほとんどである。
しかしながら、港の形状や、避泊地が確保できない。台風の強度などを鑑み、船長が判断すれば、やはり着岸したまま台風をやり過ごすこともできる。
(P&Iで岸壁補修はできるが、5種保険にはいっていないと自船の修繕は担保されないので注意)

金沢では、入港しようとする船舶金沢港周辺以外の安全な場所で避泊し、入港を見合わせること。ただし、金沢港以外に避泊する場所がないときは、関係官庁に連絡して指示を受けること。この場合、金沢港は港内が狭く錨泊地が限定されることから、原則として岸壁に着岸させ避難するものとする。としている。また、1000tや高乾舷船を防波堤外退避と位置づけしている京浜港(横浜・川崎)においても、「但し防波堤外に避難することが適当でないと判断される船舶は、係留強化を行う等、十分な安全対策をとること」となっているし、鹿島では、港内において係留避泊する船舶は、増しもやい、機関の準備、定期的な係留状況の確認等の対策を実施すること。と親切に添え書きしてくれている。(ただし、鹿島ではPort Authority 宛てのPetition letterを代理店経由で事前に提出しなければならない。)

上記のように、各港によって緩和措置や、勧告具合が少々異なると共に、本船の特性や積荷の状態・ひいてはスケジュールなども十分考慮しなければなりません。台風接近や発達した低気圧の接近に伴っては、代理店、オペレーターと連絡を密にして動向を決定しなければなりません。船長は、独断で決めない方が身のためである。



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