ECDIS と ECS の違い

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ECDIS (Electronic Chart Display and Information System) は、国際航海に従事する500トン以上の旅客船、及び3000トン以上のタンカー、貨物船に対し段階的にECDISの搭載が義務化された。将来的には一部内航船にも適用される。

ECDISは、IMO/ SOLAS条約の性能基準を満たす電子海図表示装置である。一方、性能基準に適合していないものにECS(Electronic Chart System)がある。
IMOの性能基準は大きく2つあって、それは、海図の規格と装置の機能である。
1つ目は必ず
公式海図を使用しなければならないこと。国際水路機関 IHO が定める基準従ってデジタル作成されたベクター海図(画像情報を何枚も重ねていくレイヤー方式)で、オブジェクトの位置は世界測地系(WG84)に準拠しているものとなっている。IHOの海図作成基準(S57)に適合していても、民間会社が作成し、政府の水路機関(日本の場合は海上保安庁水路部)によるものでなければ非公式海図となる。
機能としては、コンピューター解析による自動航行/自動警報表示、TT (Target Tracking) の表示、レーダーのオーバーレイ(重畳)、航海計画、座礁等避航操船援助、航海関連情報、航行記録、バックアップ等を享受できるものとして定義される。

電子海図表示装置は便利であるし、航海の安全に寄与することは明らかだが、ECDIS を搭載すると、船員はそれに乗船できる海技免状となっている(Generic講習修了→免状書替)ことが要求されるのは勿論、各搭載 ECDIS の機種ごとに講習を受ける必要もあって、コストが非常にかかるため、多くの船員を抱える中小会社にとっては大きな負担となる。従って、ECDIS がまだ義務化されていない内航船では ECS が普及している。

ECSは、ベクター海図である ENC (Electronic Navigation Chart) を使用しているものであっても公式海図を使用していないものや、ラスター海図*1を使用している電子海図表示装置の GPS プロッター的なものから、@GPS AAIS B水深・潮 Cジャイロコンパス DRader 及び(TT)ARPA E測深器 FLog の情報を海図内に一括表示でき、ECDISと遜色なく同様の装置機能を有するものもあって種類は多様。安価であることや、免状の「非ECDIS限定」解除の書き換えや、機種ごとの講習も必要ない。
ただし、SOLAS条約には海図の要件として、「公式で最新の紙海図、または、ENCを使用して適切なバックアップ機能を備えたECDIS2台を備えること」と規定されていることから、優秀なECSを2台持ったとして当然、紙海図を省略することはできない。

*1:スキャン/ コピーして作成した電子チャートで、大きな特徴としてズームイン・アウトでチャートの字が大小する。つなぎ目がある。オブジェクトをコンピューターが判別できないなどが挙げられる。



ECDIS と ECS 使用上の注意点
電子海図表示装置は、カーナビの如く使用できるのだが、船舶の場合はきっちりした道があるわけではなく依然見張りによる避航が必要不可欠となるため、ECDISやECSに頼り過ぎた航海は危険である。例えば、ARPAに表示される対水真速度ベクトルで目視による見合い関係と同一であるが、ECDISは対地ベクトルで相手船の動きは目視によるものと異なる。
ARPA(RADAR)は対水ベクトル→ North upのRelative motionで見る。
ECDISやAISは対地ベクトル→ North upのTrue motionで見る。

True motion は、海図が固定された中で自船・他船が動く。したがって、時間経過とともに自船位置をリセットしていく。

Relative motion は、自船の位置は固定され、海図データと他船が動いていく。容量消費が大で、膨大な情報処理量があるECDISではコンピューターに負担がかかるので通常は使用しない。

よって、避航は肉眼及びRADER で行い。ECDIS では行わない。「ECDIS は確認するもので10秒以上見ない」などと提唱される。



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