Cargo Stowage
在来船:鋼材&雑貨の積付け

われら海族 Index


鋼材のS/Fは10〜20ft3/LTですが、Stowage Planを作成する場合、それはほとんど役に立たない。一種の貨物を積載し、TOTALトン数のみを知りたいだけならば使えないこともないが、普通在来船は混載が基本ですから Dead weightまで余裕があっても貨物や船の強度上追い積みできないとか、また、スペースに余裕があってもラッシングが取れない、フォークが届かない。段積み不可など条件が整わなかったりして額面通り積めないことが多々起こります。
したがって、在来船では各種鋼材の特徴を把握しつつそれらをうまく組み合わせ、Dead Weight 100% & Capacity100%を目指す(絶対無理だが)べく、独特の積み付けを施さなければなりません。

以下に代表的な貨物の基本的積み付けを記します。

Steel Coil
   
@ 船横積み。タンクトップの積付けが基本で、そのユニフォームロードに引っかからないようにする。

A 段積みの目安は以下の通り。
1)5t/Coil級  ‐ 3段
2)8〜15t/Coil ‐ 2段
3)15t/Coil以上 - 1段+Key Coil(Locking Coil)
*Midship SectionのCoil積み制約も参考にすること。

B 1平米当たりに何トン積めるかで必要面積を割り出すが、船なり方向はCoil 列計算しなければならないので、Coil幅1列を1.5m単位とすればよい。
GI Coil (GALVANIZED IRON COIL)
   通常 8.0 − 8.5t/m2
KUWAIT向け 7.5t/m2
(例題)
GICのトータルトン数3000(t) / 8.0 (t/m2) = 必要な面積375(m2)
*仮に10で割ってみると300m2の回答を得られ面積は小さくなる。しかし、この面積に3000tを積もうとすれば、4段にしないと入り切らない。GICの4段積みはご法度の事が多い。
船幅が20mの船では、375m2/20m=18.75mとなって船なりに18.75m必要となるのがわかるが、この場合、18.5m/ 1.5m(coil幅想定)とすれば、12.3列となるから、たぶん375m2では入らない。私なら船なり方向19.5m(13列分)としてstowageする。

C HR Coil (Hot Rolled Coil)
18〜33t/個ぐらいのCoilが主流なので、8.5〜11t/m2で計算する。Midship sectionにその積載方法が1tier with key coilなどのように記載されている。
Maximum “cantline depth” of locking coil is 1/3 diameter.
とメーカーから指示されることもある。
Coilの荷重は、Bottom Plateに対し面ではなく線状に接地する。言わば局部的に荷重がかけられる。軽く小さなCoilでは荷重がまばらに分散するのだが、HRC(ヘビーコイル)になると30tもある。Tanktopの強度計算方法はNK Classなどが提供しているソフトや各船社が独自に開発したものもある。また、一般的にはダンネージ(3000mm x 90mm x 45mm)を6条敷けばユニフォームロードまで耐えられると考えられているが、CoilがFloor間&Side girder間で囲まれた(longitudinalしか強度部材が入ってない)ところにすっぽり2つも入ったなら到底強度がもたないので別計算が必要である。

D シリコンコイル
自重3.5t(径90cm x 幅120cm)のアイアップで、100x100cmぐらいのパレットに乗っていることが多い。すると、3.5t/m2であるから、中甲板のユニフォームロード以内となれば、一段積みで積載可能である。

E Tin Coil
自重10t程度のCoilである。アイアップとアイサイドの両方があるので、Stowageする前にどちらであるか荷主に聞いておいた方が良いが、どちらにしても8〜8.5t/m2で2段積み可能である。

Tank top強度の決定法
通常、Midship section(船体中央断面図)を見れば、Tank topのUniform Load(等分布荷重)は書いてある。それは見かけ比重(船倉の貨物積載質量(t) ÷ 倉口部分を除く船倉の容積(m3))が0.9以下の一般的な船(ホッパータンクがある船は少々異なる)では、Inner Bottom Top 〜 Upper Deckまでの高さに0.9を掛けた値がTank Top強度のUniform Loadとなっている。(NK鋼船規則6.1.1-6)

中甲板の最小許容荷重はNKルールとして、0.7H(H:中甲板高さ)とされている。通常はこれの2倍近くの強度が確保されているようだ。

AXILE LOAD
は軸荷重という概念で、中甲板及びTank topでそれぞれに許容値が設定される。24.5kN/2Wは、乗用車などの1軸 2Wheel を表す。通常、車は2軸なので24.5kN x 2=49kNまで許容されることを示す。トラックなどはダブルタイヤなので/4Wと表される。


Steel Pipe
   
@ OD外径はインチ、長さはフィートで表されていることが多い。
1”(インチ)=25.4mm=2.54cm
1”(インチ)=1/12’(フィート) 1’=30.48cm 1m=3.28f’t

A 長さ
R-1 = 16’〜25’(4.87m〜7.62m)
R-2 = 25’〜34’ (7.62m〜10.36m)
R-3 = 34’〜40’ (10.36m〜12.19m)

B 積み付けは船なり(fore and aft line)の目落とし(cantline)が基本。稀に荷主から「各段にdunnageを入れて俵積みをしないでくれ」と希望されるが、それでも上3段は目落としして重しにすることを勧める。ローリングによって必ず隙間が拡大してゆき、そのうちに暴れ出してダメージを生じる。傷をつけたくないために行った対処が見事裏目に出ます。まあそれを希望した荷主の品物はそれでも良いのだろうが、在来船は他の客との相積みであるからそれにダメージが拡大し大迷惑である。その保障や船体修理の問題も生じる。

C Stowage Planの席はpipe長さより1m長くとる。またコーミング奥に突っ込むのは1.5~
2mを最大(spreaderから伸びるslingがコーミーングに当たって物理的にそれ以上入らない)にし、その先まで人が潜ってPipe hookを掛けられるようにコーミング下方より70~100cm程度をクリアランスとしてとれるよう高さを考慮する。

D 俵積みPipeの高さHを求める計算式は
H= D(N-1)√3+D = D(N-1)x0.866+D
D:PipeのOD N:Pipeの積み段数
(Pipeの下には、4,5cm厚さの半割ダンネージを敷くのが常である。)

E Case Pieは船横にも積めるが、Bundle Pipeは船なりに積もう。

F Pipeは容積勝ちで、通常Tween Deckにも積載可能だが、Weight勝ちのPipeは中甲板積み不向きです。(30”以上の大径管で重量勝ちはない)

G 7”以下の径はBundleでくることが多い。

H ピラミッド(△)を最下段からやると時化た時に動く可能性があるので、中段くらいまではサイドtoサイドで積み上げ、その上でピラミッド型を形成する方がよい。

I On deck積み可:Stopper等の養生に十分配慮すること。

・一山100tくらいまでが理想。
・Stanchionの溶接は必ず梁の上とする。
・Wedgeを忘れない。
・Lashingの半分はジャンピング防止策として。
・一体化したpipeの移動力(加速度)を計算し、それに耐えうるStanchion(stopper)を設置する。
 

FIパイプは要注意!
ミルポート(鉄鋼メーカーの専用バース)は、バースタームでないので、鉄鋼メーカー自身の作業員がステベとなる。いわばFI (荷主が積荷作業を手配し、その費用を負担する。) なのだが、二港間で融通が利かずとんだ出費となることがある。

先港→次港で径の違うPipeを追い積みのする場合がある。この際は、次港でまず先港積みのPipeの上にダンネージを敷いてFlat な状態にしてから追い積みを開始する。
FIは通常ダンネージ費用もLashing費用(資材を含む)も荷主持ちであるのだが、こういう場合は、ダンネージ費用+作業費用が船社に別請求されるので注意したい。
先港で出来る限り貨物事態がFlatになるよう仕上げてもらう。


鋼板(Steel Plate)
   
@ 船横(athwartships)・船なり(fore and aft line)・切り積み(partially load)可能。ユニフォームロードによる。但し、段積み制限があるから注意の事。10/m2くらいになる。

A フォークで持ち上げられるようダンネージ(標準L2.5m x D6cm x H1cm)を入れるので、必要容積は鋼板のみのものとならない。
ダンネージは1.5~2m間隔ぐらいで、必ず垂直線上に重ねていかねばならない。ちぐはぐにダンネージを入れてしまうと鋼板がその重みで波打ってダメージとなる。

B 鉄の比重は7.85g/cm3(7.85t/M3)である。
L15.85m x D3.45m x H3.5cmの鉄板の重量は?
15.85 x 3.45 x 0.035 x 7.85 = 15.0t
これを応用すると、鉄板の総積み高さがわかる。2500tの鉄板(上記のLDHとする)を230m2に積載する場合は、
鋼板のみの高さ = (2500t / 7.85(t/M3) )/230m2 = 1.38m
ダンネージを各鋼板間毎に入れるとして、
ダンネージの必要枚数= 1.38m / 3.5cm = 39枚
 ダンネージ高さ= 39枚 x 1cm = 39cm
総高さ=1.38m + 0.39m = 1.77m
これは、鋼板を4枚きっちり並べられることを想定して、はじめから16m x 3.6m=57.6m2 に4を掛けて230m2の面積としたが、実際の船では、鋼板をそんな風には積み付けできない。鋼板は均一でないし、船幅もそれに合ってはいない。
船では鋼板を互い違いに入れるチドリ掛け(Staggered stow)としたり、ブロークンスペースにダンネージを入れて高さを合わせながら積み付けていくのが常である。従って、計算した1.77mよりかなり嵩むこととなる。具体的な目安は、
鋼板総重量t / 4 = 鋼板積み容積m3(鋼板with dunnage)
鋼板積み容積m3 / 使用面積m2 = 鋼板積み総高さm
または、
 (鋼板総重量 / 7.85) / 使用面積 x 2 =鋼板積み総高さm
と、考えればよい。(ダンネージの厚さが変われば回答は異なる)

C 鋼板の上にはユニフォームロード以内でケース物、Pipe等を追い積みすることができる。これは、船腹の積み容積&積み重量を効率よく満たす上で非常に有効です。(S/F混載の項参照)したがって、積み高さを予想することが重要になってきます。



条鋼(Shaped Steel またはStructural Steel )
   
@山形鋼(Angle Bar)、溝形鋼(Channel)、平鋼(Flat Bar)、丸鋼(Round Bar)、H形鋼(H Beam)、鋼矢板(Sheet Pile)などの総称を条鋼という。

A大きなH形鋼除き、条鋼の製品荷姿(船積時)はパイリングして結束(bundle)しているものが多い。

BH-Beamは嵩を食うので、t=M3(強)ぐらいになるが、他の条鋼材はt x 1/3 = M3と考えられる。

C荷役効率は遅く、700〜1000t/day(7hours)/gang程度。

Dウェイト勝ちなので通常10t/m2ぐらいでLower Holdに積載する。(ただしユニフォームロードが10t/m2の船ならば、9.5t/m2ぐらいまでに抑えるのが望ましい。)

E12m長には13m、6m長には6.5mの席でStowageする。12mものに12mの席では必ずはみ出して入りきらない。船なり基本だが、両サイドを船なりの切り積みにして、センター部を船横に積むなども在り得る。

F条鋼の上にPipeの追い積みなどは常套手段。(ユニフォームロード内)

Gダンネージはsling掛け用の意味が大。わざと折れやすいダンネージを使用することもある。ガチャッといけば、条鋼でそれ以上の保定はない。飛び出しも発生しない。(但し圧損に弱い物には注意)


レール(Rail)
日本で使用されているレールは30〜60kg/mの数種類ある。50kgPS(ペンシルバニア鉄道型)は、50kg/mに同じ、50kgN型や50kgTなどはその改良型で、断面図にすると高さや厚さが微妙に異なることがわかるが、船積みに関して言えば大勢に影響はない。船で運ぶレールの長さは各種とも25mと50mの2種を代表とするが、最近では長尺レール(150m)専用輸送船というのもできている。
@ 荷姿は上下相向かわせた格好で3束または5束(Bundle)にしている。

A S/Fは0.54m3/MT( 20ft3/LT)
重量(t) x 0.54(m3/MT) = m3

ユニフォームロードと比較して積み高さを設定する。(貨物が長いので、フォークリフト2〜3台を使ってで積載していくが、最後は宛がいで持っていけるのでフォークによる高さ制限はない。)



扁平鋼塊(Steel Slab)または大鋼塊 (BLOOM)
@ 断面は長方形で、L6.5m x 1.2m x 0.25m (15t)程度が平均。錆や濡れにはあまりやかましくない。

A Tank topに積載し、ダンネージは各枚ごとに入れる。(揚げ地でSling Wireを通せるように)

B サイドのビルジホッパータンク上に積みつける場合は、棒積み(uniform pile)せず、千鳥状(staggered stow)に積む。

C 上にはケースなどの雑貨を積める。


Wire Rod
@ 外径1250mm 内径850mm 幅1500mm 重量2tが標準サイズで、コーミング奥が3段(フォークリフトの高さに制限されるため)、おとし部で5段積める。それ以上積むと下段でダメージが起こる。

A 船横(athwartships)に俵積みしていくので、船幅÷外径(つぶれる分を考慮して、1400mmとする)とし、偶数段は奇数段−1で数量を計算し、列を割り出せば席を確保できる。

B 鋼板の上にWire Rodを積載するコンビネーション積みは重量・容積の双方を満たすため頻繁にやる。


Steel Sheet
@2m x 2m x 20cm程度で、2〜3t/個

A下段が圧損しないよう段積み制限があるので、5〜7t/m2ぐらいで積載。よって、きれいに並べても、上にPipeなどは追い積みできない。軽いケース物などは可。

BTin sheetは80cm x 80cm(100cm) 1.5〜2tでL/H なら5段、T/Dで2段可能。


箱物(Case、Crate、General Cargo)
   
@ 貨物のTotal 立米数を
1)コーミング奥:面積 x 3.8m x 0.8
2)落とし込み : 面積 x 4.3m x 0.8
として割り振る。3.8m 及び 4.3mは過去のデータから導いた平均高さ。0.8はブロークンスペースを考慮した係数。
参考1:General Cargo のS/F:53ft3/LT = 1.5m3/t
     Machinery1000tを積載するのに必要な容積は
        1000t x 1.5m3/t = 1500M3
参考2:CKDのS/F:61ft3/LT=1.7m3/t

A 甲板強度はユニフォームロードによる。

B 中甲板では、5t以上の貨物は落とし込み部に積みつけること。フォークリフトで抱えるとAxle Load(軸許容荷重)を超えてしまう。Axle LoadはMidship sectionに記載(2軸タイヤ4つで何トンなどと書いてある。)

C ケースの上にはエルボなどFittingの軽い貨物を乗せることができる。

D Steel structureは、条鋼を組み合わせて形作り製品化したものなので軽貨部類で、どちらかと言えばGeneral cargo扱いとなる。これは箱物の上においたりもできる。通常Hold内で3.5m、on deckで1.5mくらいの高さまで積載可能です。

Heavy Case(20t以上)
     
1)20t以上の貨物は外地で本船荷役となることが多い。
2)Slingを通すためには、Heavy Case間は人が通れるスペースを確保しなければならい。またSling Pointも同様で、貨物下部と床面の間はSling径の3倍以上なければ揚げ地で苦労するので、Dunnage等で嵩上げする。Slingを付けおけない場合は、Leading Ropeを取り付ける。(こういった物に限らないが、常に揚げ地のことを考えて積み付けること。)
   
3)強度はユニフォームロードとせず、局部荷重で考える。
4)ヘビーケースの天板は非常に弱い。天板内に強度部材がほぼないというのも珍しくなで、2t~3tのFitting等でさえも積載してはならない。
5)オーバーラッシングは転倒及びジャンピング防止にして、SecuringはStopperメイ計算すべき。


本船荷役
本船のギア(本船に設置された荷役装置:Crane またはDerrick)を使用し、本船のCrewによって荷役(クレーンオペ、玉掛から玉外し、配付けまで)をすること。

現在では重量物荷役などがそれに当たる。重量物荷役は多少の技術が必要なのでそれに精通した乗組員によって行うのが安全とされるからです。勿論、日本のステベさんなら当然やれるのだが、重量物積載には本船吊具を使用したり、バラストオペレーションを要求される場合もあるので、ステベと乗組員のコンビネーションでやるより乗組員に全てを任す方が一連の流れとしてスムースかつ齟齬が少ないのです。また、外地でそれを期待するのは危険過ぎます。中東などでは、20t以上の貨物を本船荷役と規定している港が多い。これは技量に加え、吊り資材も手配できないという二つのことがらに起因します。

私が内航のバルクに乗船しているときのこと。「和歌山は本船荷役」とBos’nに言われて驚いた。結局は、ステベによる本船クレーンを使用してのバケット荷役でした。おそらくなんかの耳学問で勘違いして覚えてしまっているのでしょう。本船荷役と本船クレーン使用とは全く違います。


中古車(Used Car) Lift on Lift off
   
@On deck積み可。但し、自走させない。

A15〜30t車についてはエルフ(30cm x 7cm x 3mのdunnage)(またはボトムシーリングともいう)を敷く。軽いものはタイヤのまま。

BLashingはチェーンでやるが、港によっては使い捨てのロープ等で行うところもあるので強度に注意。



電車(Train)
   
@電車の吊り具はshipperが用意する。

A電車の場合は、積載までに完全にサスペンションが殺されていることを確認。サスペンションが生きているとLashingが効きにくい。



* 在来船での貨物の保定は別ページです。

作者著書