航海士の台風に関する認識 2
台風避航編

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台風は一般流(貿易風・偏西風)によって移動する。低



いわゆる避航しなければならないとするときは、大きくわけて一般的に二つのルートが定義されている。

(1)日本近海から南方へ下



て台風の前面を突っきり、可航半円である左半円(但しこの場合も台風の中心から十分に離れてその影響を避ける)を通過します。
これは、絶えず追波・追風を受け安定した航行(た


高を括っても、台風が転向し近づいて来た場合には逃げ場を失ってえらい目に遭う。
緯度・経度を示している地点が
再接近位置。

CPAは予報
る。
図1:南進船の台風避航ケース


片や南方から
日本に向け北へ上
向い風を受けて進むことになり、速力の低下を及ぼし台風から抜けきらない状態が続くと懸念されるからに他なりません。また、目的地に達したところで、良港に避難できなければ、台風が船を追いかけ接近した場合、再度危険に陥ります。
Drifting中、台風の進


台風の前面通過しても影響が少なく航行できることも得てしてある。
この場合も勿論、風上に立て、うねりは船首斜めに受けて航行する.。

こういうこともあって、どちらかと言えば。北上船の航路選定の方がやっかいである。では、問題の北上船について事例を挙げ、それについて解説します。
本船はシンガポールを出港し、鹿児島に向かう

東の太平洋上で台風8号の発生となった。




図2:台風8 MORACOTが発生 8/4/0000現在の天気図
は本船の位置

上記の天気

その後のシュミレーションである。
がCPAである。予想円の中心部から240mile(予想円の端から200mile)となる結果を得た。
本船船長は増速の上、針路保持し、台風の前面通過の意向を示した。
さて、あ


影響をうまくとらえさらに速力を上げれる。
2)台風が未だ迷走状態の発達期であったため、勢力が弱いこと並びにその進路が定まっていないこと
図3:台22-29N 121-40Eを起点に再接近をシュミレーション
3)台風をかわったあと良港に入港

でDrifting し、台風の影響がなくなってから鹿児島港に向かう。
台風の前面にはでないこと。
によりこの航路は選定されなかった。これも全く正しい判断である。北航船の台風前面通過はセオリーに反する。ま、さすがだ! しか

はじめる。

そして、泡食って選ばれたコースが左図4である。

がCPAである。予想円の中心部から300mile(予想円の端から250mile)となる。

 
図4:Drifting点を起点に再接近をシュミレーション

全く拙劣かつ無謀なルート選定であると言って過言ではない。一瞬ギャグかと思った。 わざわざ1日待って前面通過など


限りこれでも事故は起こらないであろう。
ならば、初動は前面通過で良かったのではないか?
私が何を言いたいか!
(安全航海を遂行した乗組員を労うのは勿論だが・・・)
天候は時々刻々変化するものであるから朝令暮改は良い。しかし、一度定めた基本方針は決して覆してはならない。現場が混乱するからである。

台風避航



諸条件を鑑みて、台風の右半円(太平洋側)に出ることが有益だと判断できることも往々にしてあります。科学の発展と共に航法も変わってきていますね。

「頑な」考えは、より危険を生みます。的確な状況判断をお願い致します。冷静かつ多角的に、そして柔軟に考えなければなりません。近年は迷走台風も多いが基本線の「余裕のある時期に、的確に!」は変わらない。


作者著書

*ここに揚げた事例は、フィクションです。作者が面白可笑しくシュミレーションしたもので、実在する船舶が航海したものではありません。それらとなんら関係のないことをご理解下さい。
ただ・・・ベテランのオペレーション担当の中には、現場船長の意向・現場の状況など関係なく、いかなる場合も、元船長を傘に自分が決めないと気が済まない困った方もいる。その傲慢さはある意味敬服にも値するが、つまら



疑問を呈することができることこそ能力です。このHPがお役に立てれば幸いです。